<社説>女団協が大会呼びかけ 立場を超えて県民結集を


<社説>女団協が大会呼びかけ 立場を超えて県民結集を
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 米兵による相次ぐ性的暴行事件に抗議するため、県内22の女性団体で構成する県女性団体連絡協議会(女団協)が事件に抗議し、再発防止などを求める県民大会の開催を呼びかけている。県議会の意見書・抗議決議を基に、県民一丸となった抗議が必要だと女性たちが立ち上がる。

 幅広い県民の結集で、このような事件を二度と起こしてならないという意思を示す場が求められている。各種団体、政党は呼びかけを重く受け止め、政治的立場や主義主張を超えて行動してほしい。

 女団協が開催の足掛かりとするのは、県議会が7月10日に全会一致で可決した意見書と抗議決議だ。県議会は両案の文面に違いを持たせる異例の対応をとった。訴えを形式的なものとさせないためだ。

 意見書は地方自治法に規定され、地方議会が国に意見を伝えるための文書である。法的文書として取り扱われる日本政府宛ての意見書で特筆されるのは、米軍事件の県側への迅速な通報ができるよう「米側との調整を行い、断固たる措置を取ること」と求めたことだ。被害者への性的二次被害防止への対応も促した。

 事件について県側への連絡がなかったことが問題化している。意見書は県側への連絡が遅れることのないよう、日本政府に主体的な対応を促している。

 米政府、米軍宛ての抗議決議が重きを置いたのは再発防止の要求だ。米軍組織は「人権意識に問題があると言わざるを得ない」と断じ、夜間外出規制など具体的で実効性のある再発防止策を「県民に示す」よう要求項目を立てた。

 一般的に地方議会の決議には法的根拠がなく「議会としての事実上の意思表明」とされる。しかし今回、意見書と書き分けたことを含め、危機感を持った県議会による重大な意思の表明である。女団協が立ち上がる今、県議会本会議が両案を欠席、退席なしの全会一致で可決したことをあらためて確認したい。

 女団協は1967年に公立保育所設置要請に関わった女性たちが結成した県婦人団体連絡協議会の流れを引き継ぐ。施政権返還前から女性、子どもの視点で生活を守る活動を展開し、沖縄の歴史に足跡を刻んできた。今回も女性の人権が踏みにじられていることを重視してのことである。

 事件の発覚後、被害者の落ち度を指摘するような誤った言説がネット上に散見される。県議会も政府に対応を促したが、被害者がさらに傷つくようなことはあってはならない。言われなき批判に多くの県民が胸を痛めているだろう。大会が開催されることになれば、被害者をおとしめるような言説を県民が許さないことを示す場ともなろう。

 日米両政府と対峙(たいじ)する大会を構えることは県民の重い決断を伴う。しかし、県民意思を表明しなければ事態は動かない。そのことを両政府は真摯(しんし)に受け止めるべきだ。