<社説>児童虐待過去最多 大胆な防止体制確立を

 児童虐待が1990年の集計開始以降、25年連続で増えている。取り組みは強化されてきた。対策が現状に追い付いていないということだ。

 児童相談所の専門職を大幅に増やすなど、大胆な防止体制を確立することで、子どもたちに健全な環境を提供し、健やかな成長を保障したい。
 厚生労働省によると、2015年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待の件数(速報値)は、前年度比16%増の10万3260件で、初めて10万件を突破し、過去最多を更新した。
 警察からの通報が大幅に増えたことなどが要因とされる。とすれば、これまでの統計は実態と懸け離れたものということになる。そもそも統計は児相が対応した件数であり、虐待に苦しむ子どもたちの実数を反映したものではない。事態は統計の数字以上に深刻だ。有効な解決策の確立を急ぐ必要がある。
 沖縄県内は前年度比44%増の687件で、過去最多だった。10年度以降減少傾向にあったが、14年度から増加に転じている。
 子どもの前で配偶者らが暴力を振るう「面前DV」と、子どもへの「暴言」を合わせた「心理的虐待」は全国で47・2%、県内では44・1%を占めており、ともに最も多い。
 心理的に虐待しているのは、実母や実父がほとんどである。それを止められない親を立ち直らせることで、半数近くの児童虐待を防げる可能性がある。親への支援をさらに強化したい。
 児相の適切な対応で救われた子どもたちは少なくないだろう。一方で、人員不足などから対応が後手に回った事例もある。
 厚労省は児童福祉司などの児相の専門職を19年度末までに1120人程度増やす目標を決めている。増え続ける事案に対して、この人数で対応できるのか精査が必要だ。全国208カ所の児相の現状を改めて把握し、場合によってはさらに増員させることを考えるべきである。
 守れたはずの命を守れなかったこともあった。二度と繰り返してはならない。児童虐待が後を絶たない現状に、社会全体で強い危機感を持つことが求められている。行政だけでなく、学校や地域などの総力を挙げて児童虐待根絶に取り組みたい。



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