沖縄地方最低賃金審議会は県内の最低賃金について、現行の時給896円から56円引き上げて952円とするよう答申した。昨年の43円増を上回り、引き上げ幅は過去最大となった。
しかし、東京など首都圏の最低賃金とは開きがあり、地域間格差の是正は今後の課題だ。中小企業では人件費の支払い能力に懸念が広がる。最低賃金を上回る時給を支払うことができるよう、中小零細への支援策が必要だ。
各都道府県の審議会による改定の基準となる目安額について、中央審議会は50円増を提示していた。沖縄の審議会の答申はこれを6円上回るものとなった。連合沖縄は現行の最低賃金の水準が「ワーキングプアとされる水準にとどまり、セーフティーネットとしては不十分」として、引き上げを求めていた。物価高にあえぐ県民生活に配慮し、引き上げ答申となったことは妥当と言える。
地域格差は縮まりつつも依然として横たわる。今回、中央審議会は都道府県の目安額に差をつけず、3年ぶりに横並びとした。各地域の経済情勢によって都市部の目安額が高くなっている例年の設定が地域格差を招いているとの指摘があった。一律の目安額設定はこの是正も意図してのこととみられる。
では差はどうなったか。現行の沖縄の最低賃金は896円。東京は1113円で217円の差がある。今回の引き上げで、東京は目安額通り50円増の1163円となる。目安額に上乗せした沖縄との差は211円に縮まった。
中央審議会が決定した目安額をベースにした全国平均は1054円で、沖縄はまだ届いていない。仮に時給千円でフルタイムで働いても年収は200万円程度である。安定的な生活を送ることができるとは言い難いだろう。
県労連は全国一律の時給1500円を実現するよう求めていた。県労連の調査で、那覇市で一人暮らしの25歳女性が生計を立てるために必要な時給は1662円、男性で1642円との結果が出ている。最低賃金の水準は、将来に展望を抱いて暮らしていくにはまだ不十分なのだ。
一方、県内に多い中小企業にとっては人件費の確保が課題となる。沖縄の改定の引き上げ幅は4年連続で過去最大を更新した。2020年度の792円から千円台をうかがうまでになり、急伸している。
県内の中小企業では、原材料費の高騰もあって、価格転嫁をしても利益確保ができていないところも多い。経営基盤の弱い事業者は価格転嫁自体していない。人材不足が続く中で、人件費がかさむことは大きな負担となろう。
沖縄地方審議会は答申に合わせて、取引価格の適正化や価格転嫁ができるよう、国の取り組みを促す付帯決議を採択している。中小企業が賃上げ原資を確保するためにも政府の対応が求められる。