文部科学省は公立学校の教員給与に上乗せ支給している「教職調整額」について、現在の月給4%相当から3倍超となる13%に増額する案をまとめた。教員確保策の一環で、文科省は教員給与特別措置法(給特法)の改正案を来年の通常国会に提出する。
教職調整額の増額のほか小学校の教科担任を2160人拡充するなどの負担軽減策も打ち出しており、合わせて教員確保につなげたい考えだ。
教員不足解消への一歩とも言えるが、課題となっている長時間労働の改善につながるか注視する必要がある。
文科省の2022年度調査では、月45時間の残業上限時間を超える教員は小学校で64.5%、中学校で77.1%に上る。過労死ラインの「月80時間超」に相当する教員も小学校で14.2%、中学校で36.6%となっており、依然として長時間労働が常態化している。
今回の教職調整額増は、中央教育審議会の特別部会が5月に提言した教員確保策に盛り込まれたものだ。多忙な教員の処遇改善策としては一定の評価はできよう。
教育関係者からは、教職調整額を上乗せする現行制度が長時間動労の要因だとして廃止を求める声も根強い。残業代が支払われず「定額働かせ放題」とも指摘される現行制度の継続では、長時間労働抑制に結びつくか懸念も残る。
教員の勤務時間は、仕事に自発性や創造性が期待され、勤務の内外を切り分けるのは適当でないとして、残業代の代わりに教職調整額が支給されている。
この制度によって、過重な勤務実態が見えにくくなってはいないか。給与体系を残業代が支払われる制度に転換することで、長時間労働が残業代として可視化されれば、より具体的な業務の見直しや、管理職らの長時間労働抑制の動機付けにつながることが期待できよう。残業代を支払う制度では財政負担も拡大する可能性もあるが、抜本的な業務負担軽減に向けて、制度転換を改めて議論すべきだ。
教員不足解消には、処遇改善だけでなく、負担軽減が重要になる。文科省の教員確保策では、小5、6年で進める教科担任制を3、4年へ拡大、新任教員の授業持ちこま数減も進める。中学校では不登校やいじめに対応する教員を1380人配置するという。
しかし、文科省の調査では、24年度開始時点で教員不足の状況が1年前より「悪化した」と回答した都道府県・政令指定都市教育委員会は32%に上った。処遇改善や業務負担減など教員の働き方改革を進めると同時に、教員数増にも踏み込むべきだ。
「教育は国家百年の大計」と言われるように、人材育成は社会発展の要だ。教員が健康でしっかりと子どもたちと向き合える環境を構築するたにも、政府は現場の状況に見合った思い切った財政措置や法改正に踏み込んでほしい。