<社説>敦賀原発の審査不合格 規制委の判断受け入れよ


<社説>敦賀原発の審査不合格 規制委の判断受け入れよ
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 原子力規制委員会は福井県にある日本原子力発電(原電)敦賀原発2号機が原発の新規制基準に適合しないとして、事実上の不合格を決定した。一般からの意見公募を経て10月以降に正式決定する。

 原電は今後も再稼働を目指す考えだ。しかし、東日本大震災後に見直された原発の新設置基準に適合しないと結論づけた規制委の判断は重い。廃炉を選択すべきである。

 震災後に発足した規制委は東京電力福島第1原発事故を踏まえて決定した原発の新規制基準で、活断層上への原子炉設置を禁止している。

 敦賀原発の敷地内の断層(浦底断層)は非常に危険な断層であることが判明している。規制委は、浦底断層から枝分かれするK断層が活断層で、原子炉建屋の真下に延びている可能性は否定できないと判断した。2号機は直下の断層の動きで影響を受けるかもしれないということだ。規制基準に照らして運転を認めることはできないという結論は極めて明快である。

 原電は規制委のこれまでの聞き取りに追加調査の意向を示し、審査継続を求めたが退けられた。新基準にのっとって廃炉が促されたようなものである。ただ、規制委に廃炉を命じる権限はない。原電は審査を再申請する考えだ。

 岸田政権の原発推進策は原電に時間的猶予を与えた。東電福島第1原発事故後、原発の運転期間は原則40年、最長60年となっていた。敦賀2号機は運転開始から37年となっており、再審査が長引けば廃炉となる可能性があった。

 ところが、2025年6月に始まる新制度は40年の期限を撤廃し、60年超の運転も可能にしたのだ。

 この制度改正を巡っては規制委が政府方針を後押しするように了承しており、規制委の独立や信頼を大きく損なうものとして批判が沸き起こった経緯がある。

 新制度の適用によって敦賀2号機の再稼働に道は残されたとしても、断層が動く可能性を認めた規制委の判断は軽んじられるものではない。

 立地自治体である敦賀市では原発のみに依存しない経済活性化策への展望が開けつつある。北陸新幹線の金沢―敦賀間の開業によって観光入域が大幅に伸びているからだ。規制委の判断を脱原発依存の契機とすべきではないか。

 東日本大震災の教訓を忘れてはならない。脱原発は震災後のエネルギー政策の柱だったはずだ。震災後、政府は「原発に依存しない社会」を掲げて2030年代に原発ゼロを目指すと宣言した。この目標に立ち返るべきだ。

 海岸線にある原発は地震や津波に弱いことが研究などで明らかになっていながら、すぐに対応をとらなかったことも福島第1の事故の教訓でもあった。惨事につながりかねない要素は取り除くべきである。原電は今回の規制委の判断を受け止め、廃炉へとかじを切るべきである。