<社説>またも米兵女性暴行 沖縄駐留の資格はない


<社説>またも米兵女性暴行 沖縄駐留の資格はない
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 またしても県民の人権を踏みにじる事件が発生した。米軍の規律の緩みが深刻だ。このままでは沖縄駐留を続ける資格はないことを米軍は自覚すべきだ。

 今年6月下旬、沖縄本島で女性を性的暴行したとして、県警が5日、在沖米海兵隊員を不同意性交致傷の疑いで書類送検した。

 今回の事件の前にも米空軍兵長の男が昨年12月、少女を誘拐して暴行を加えたとしてわいせつ誘拐、不同意性交の罪で今年3月に起訴された。さらに今年5月には米海兵隊員が女性を暴行したとして不同意性行致傷罪で6月に起訴されている。有罪はまだ確定していないが、あまりにも米兵が絡んだ事件が多すぎる。

 林芳正官房長官は5日の定例会見で事前に用意したメモを読み上げ「地元の皆さまに大きな不安を与えるもの。これまで発表した一連の再発防止策の実施を含め、事件事故防止の徹底を引き続き米側に求める」と述べた。

 林長官の発言から政府の危機感を感じることはできない。国民の人権と安全が外国の軍隊によって蹂躙(じゅうりん)され続けている深刻な事実をどれほど真剣に受け止めているのか。

 いずれの事件でも容疑者の身柄は起訴されるまでの間、米軍の管理下に置かれている。そうであれば、米軍は昨年12月の事件の段階で綱紀粛正を徹底し、再発防止策を講じることができたはずだ。それにもかかわらず事件が頻発しているということは、真剣に取り組んでいないことの証左である。県民を軽視するのもいいかげんにしてほしい。

 今回の事件の通報は、県と県警が7月に合意した、米軍人などの性犯罪の情報提供の枠組みに基づく。だが、そもそも日米両政府は1997年に、在日米軍が関わる事件・事故が発生した場合、米側が外務省などに速やかに通報することで合意している。

 被害者のプライバシー保護などを理由に、県警が逮捕後または書類送検後、県に情報伝達するというのが新たな取り決めだ。今回は事件発生から情報伝達まで2カ月以上経過しており、住民の安全への周知を考えるとあまりにも遅すぎる。97年の合意から後退していないか。

 県警の初動対応も問題だ。95年9月の米軍人による少女乱暴事件を背景に「殺人、強姦という凶悪な犯罪」については、起訴前の身柄引き渡しを提起できるように運用改善されたが、今回も起訴前の身柄引き渡しを求めなかった。事件の早期究明と再発防止を図るためにも、容疑者の身柄引き渡しを求めるべきだった。主権に関わる問題であり、積極的に日米当局に掛け合い、早期立件に努めるべきである。

 相次ぐ米軍事件の防止策は日米地位協定の抜本的な改定と米軍基地の整理縮小である。基地の過重負担による人権侵害を防ぐため、国は早急に米側と協議すべきだ。