将来に希望を持てない青少年に対する継続的支援の効果が明らかになった。苦境にある青少年への支援を広げる政策展開を急ぐ必要がある。
県は中学卒業時の進路未決定者や高校中退者を対象に、相談員らが聞き取りをした初めての調査の報告書を発表した。対象は16~20歳の76人で大半が公立の居場所施設や福祉関係施設を利用している。
調査は施設利用以前と、施設を利用している現在の心理状態を比較した。浮き彫りとなったのは支援を通じて、一人で悩んでいた青少年が自信を取り戻していく姿である。
自分の将来に対する期待に関する設問で「目標の定まり・目標に向けた前進」と答えた人は、施設利用前は15.8%だったのに対し、施設を利用する現在では46.1%に増えた。期待は「特になし」と答えた人は、施設利用前は30.3%だったが現在では10.5%に低下した。
施設利用で自分に対する期待や望みを抱くようになり、目標を定めて前へ進む意欲が出てきたことの表れであろう。調査では「将来の夢が見つかった」「将来の見通しが少しずつ立ってきた」との声が寄せられた。
「就職・自立」に期待する人は施設利用前は15.8%だったのが、現在では32.9%に増えている。支援が青少年の就職や自立への後押しになっていることが分かる。これらの結果について県は「現在利用している『居場所』を中心とした支援施設の有効性が確認できる」と分析した。
しかし、今回の調査の対象者のように「居場所」などの支援施設を利用している人は限られている。調査に携わった琉球大の本村真教授は「支援につながっていない若者は何倍もいる。そうした人を含めた政策を展開しなければいけない」と指摘する。
今回の調査では、支援につながりにくい青少年やその世帯の特徴について、支援施設職員に聞いており、何らかの理由で保護者が支援を拒むケースが多いことが分かっている。情報不足や大人への不信を挙げる職員もいた。
保護者らが支援にネガティブな印象を抱いていることがうかがえる。就労や進学など青少年の事情に応じた個別の支援策を提示し、丁寧に説明する必要がある。そのためにも地域組織の充実、人材確保が不可欠だ。本村教授は子ども・若者育成支援推進法に基づく地域協議会の設立を提唱する。県内では石垣市と伊江村に設置されている。
子どもの貧困率の改善に向け、乳幼児期、小中学生期、高校生期の各ステージに応じた「切れ目のない支援」の必要性が叫ばれている。孤立する青少年と支援をつなげる地域組織の設立が求められる。
定数不足の状態にある地域の民生委員・児童委員の要員確保、児童相談所の職員増も必要となろう。厳しい環境にある青少年を支援する態勢づくりを急ぎたい。