県が入札公告を出していた大型MICE施設建設事業の応札がなく、2029年3月としていた供用開始が遅れることが確実となった。県は再度、入札公告を検討する方針だが、事業者が参入できる条件整備に向け、計画の見直しは避けられない。
県は、民間資金やノウハウを活用するPFI方式で大型MICE施設やホテルなどを整備する方針だ。2日から入札の受け付けを開始していたが、参加が有力視されていた大林組(東京)は応札を見送る意向を県に伝えていた。
県はMICE振興によるビジネスツーリズムを沖縄観光の新機軸に位置付け、与那原町と西原町にまたがるエリアへの立地を目指すが、採算性に関する調査は十分だったのか。県は採算性の核となる運営会社の誘致について、入札後に事業者に委ねるとしているが、事業者側にとってリスクが大きいのではないか。
完成後の運営の見通しがつきやすいよう、自ら展示会運営会社へのセールスやプロモーションなどを積極的に行うなど、事業者が参入しやすい環境を整える必要がある。
そもそも、大型MICE整備は当初、国と県が沖縄の経済振興の柱とすることで一致していた。県は当初、国の一括交付金を財源にした「大型MICE受入環境整備事業」で、20年の利用開始を目指していた。だが、採算性などを疑問視した内閣府が交付を認めなかった。その後、計画を立て直し、PFI方式を用いた事業の基本計画を22年8月に策定した。
県は「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」で、大型MICE施設を核とした「ビジネスツーリズム」を沖縄観光の新機軸と位置付けている。同計画を踏まえ、県は参入の要件にホテル事業を加えた。
だが、周囲に観光資源のない地域でのホテル稼働率への懸念や、ホテルが充実する那覇市との近さなどからホテル事業の採算性に疑問を抱く関係者も多かったという。
県が描く東海岸開発に疑問符が付いたとも言えるが、西原町と与那原町にまたがる大型MICE施設は、本県の課題である「西高東低」の経済格差を是正する上でも重要な社会インフラとなり得る。
両町は今後も大型MICE施設を見据えたまちづくりを推進する方針だ。崎原盛秀西原町長の「なぜ企業が参入できなかったのか、課題はどこか再調査してほしい」との言葉を重く受け止めるべきだ。
国内の他地域で成功している展示会や見本市誘致のめどが立てば、集客数の試算も可能となる。県は今後、新たな応札に向け宿泊施設の規模など周辺環境整備についてより具体的な見通しを洗い出す方針だが、自ら汗をかき、採算性の根拠となる集客数やホテルの稼働率についても調査を入れるべきだ。
沖縄の均衡ある持続可能な発展に向け、大型MICEの早期再公告にこぎつけたい。