4人が立候補した立憲民主党の代表選は23日に投開票され、元首相の野田佳彦氏が新代表に選出された。近づく総選挙で政権の選択肢として国民に認められるかどうか、再び首相を目指すという野田氏の手腕が注目される。
だが、自公を過半数割れに追い込むためにと保守層にウイングを広げるあまり、自民党と代わり映えしない主張となれば野党第1党の存在意義は失われる。政権交代が可能な政治のためには、政府与党との政策の違いを明確にして国民に示すことが必要だ。
代表に就いた野田氏は衆院選に向けてマニフェスト(政権公約)作りを急ぐと述べた。政治不信が高まる中、生活者の声に耳を傾け、国民本位の公約を示せるかが問われる。とりわけ辺野古新基地の見直しを含む在沖米軍基地の負担軽減、安全保障政策で新たな選択肢が必要だ。
旧民主党の政権時に野田氏は首相を務め、沖縄の基地問題にも当事者として携わった。米軍普天間飛行場の辺野古移設について、首相として「唯一、有効な方法である」として推進してきた。
県内移設の見直しを掲げながら結局は自民と同じ辺野古新基地に回帰したことが、政権交代に対する失望を招いたことを野田氏は忘れてはならない。国民に選択肢を提示できなければ、政治不信や無関心を助長するだけだ。
今回の代表選で琉球新報が実施したアンケートに、野田氏は辺野古の新基地建設について「立ち止まって見直すべき」との立場を回答した。日本記者クラブの討論会では「沖縄の民意を踏まえ、米国と膝をつき合わせ丁寧に協議することが基本」と述べた。
辺野古新基地は費用や工期が際限なく膨張し、普天間飛行場の早期返還につながらないことが明らかになっている。自民の総裁選立候補者が後ろ向きな日米地位協定の改定とともに、自公政権との対立軸を立憲が示すことだ。
野田氏は政府が尖閣諸島を国有化した際の首相でもある。当時の石原慎太郎都知事が尖閣購入を計画していたことから、「都が保有するよりも『平穏かつ安定的な管理』に近づくと思った」と振り返っている。それであればこそ、国有化後の尖閣周辺で日中がにらみ合う状況を解消し、南西諸島周辺での紛争回避に尽力する責務がある。
「台湾有事」にあおられた野放図な防衛予算の膨張を防ぐためにも、中国との関係改善へリーダーシップを党内外で示してもらいたい。
10月1日に臨時国会が召集される方向だ。国会で野党が行政監視機能を果たし、政策を提示して、与党と政権運営能力を競い合うことが健全な民主政治の土台だ。国民の多くが納得していない改正政治資金規正法の問題もある。
自民は政局に走った性急な衆院解散は慎み、新たな党首同士の下での論戦を正面から受けて立つことだ。