<社説>能登豪雨被害 被災地支援に全力尽くせ


<社説>能登豪雨被害 被災地支援に全力尽くせ
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 元日午後、地震に襲われた石川県能登地方が今度は記録的豪雨に見舞われた。河川の氾濫、土砂災害が起きた。地震の時と同様、道路が寸断され、救援活動が困難になっている。県の集計によると死者11人で、一時は集落115カ所が孤立状態となった。

 能登半島地震の発生から時間が経過した今もなお、多くの住民が避難生活を送っている。倒壊した建物の撤去が遅れており、復興の妨げになっている。広域で発生した長期断水は5月にほぼ解消したばかりだった。今回の豪雨で再び、輪島市など3市町で約5千戸が断水した。

 被害に遭った住民の「心が折れそうだ」という悲痛な声が伝えられている。心理的な負担は大きいはずだ。1年に2度も甚大な自然災害に襲われた能登地方の惨状を放置してはならない。官民挙げて被災地支援に全力を尽くさなければならない。

 今回の豪雨災害で深刻なのは地震で自宅が被災した人が入る仮設住宅団地6カ所で床上浸水の被害が発生したことだ。そのうち輪島市の4カ所は大雨による洪水リスクが高い想定区域に立地していた。

 能登半島は山間部が多く、仮設住宅を建設できる地域は限られており、行政は地震前から仮設住宅の建設候補地を選定していた。ところが入居希望者が多かったことや、候補地が地震被害を受けて使えなくなったことから、洪水リスクの高い地域に仮設住宅を設けざるを得なかった。

 懸念されていた洪水被害が現実になった形だ。地震の被災者が豪雨災害の被災者になったのである。高リスク地域にある仮設住宅団地で今回のような突発的な自然災害への対処が検討されていたか、検証が必要となる。

 国民の耳目はいま、自民党総裁選や新首相誕生に集まりつつある。しかし、政治の転換期の中で被災地支援がおろそかになってはいけない。

 1月の地震発生後、政府は2023年度、24年度の予備費から復旧・復興に必要な額を拠出してきたが、被災地の復興は順調に進んでいるとは言えない。今回の豪雨災害に対処するため、大型の補正予算を組むなど財政面での支援態勢を構築する必要があろう。復興を支える人材の派遣も検討すべきだ。

 27日に自民党総裁選の投開票があり、来月1日には臨時国会が召集される。首相指名という重要な政治日程の後、そのまま解散・総選挙という動きが強まっている。しかし、救援を待つ被災地に政府、国会として対処することを忘れてはならない。与野党を超え、議論を急いでほしい。

 記録的な豪雨による土砂災害や河川氾濫が毎年のように起きている。異常気象による自然災害にどう対応するかは国家的な課題となっている。莫大(ばくだい)な予算を投じて防衛力強化を急ぐよりも、自然災害に強い国土を築くことを優先すべきである。