27日投開票の衆院選の最大の争点は「政治改革」とされている。自民党派閥の裏金事件で浮上した「政治とカネ」の問題をいかに断ち切るか、本選挙戦で各党は覚悟を示さなければならない。
特に深刻な政治不信を招いた自民党の責任は重大である。しかし、掲げた公約を見る限り、政治改革を断行する決意は伝わってこない。
政治改革に関する自民党の公約は「“ルールを徹底して守る政党”に生まれ変わる」と宣言する。国会での石破茂首相の所信表明演説も同様に「ルールを守る倫理観の確立に全力を挙げる」と述べた。
長年、政権を担ってきた自民党が裏金事件について国民に謝罪し、「ルールを守る」ことを公約に掲げること自体、国民の政治不信の表れと言わざるを得ない。しかし、その自覚と反省はあるのか。
今衆院選に関する報道各社の世論調査を見ても、「政治とカネ」の問題に関して、国民は自民党に厳しい目を向けていることがうかがえる。その理由は(1)裏金問題の究明と責任追及が不十分(2)改正政治資金規正法には抜け道がある(3)政策活動費が温存された―などに集約されよう。
今回の衆院選に際して自民党は12人を非公認とし、34人の比例代表への重複立候補を認めなかった。政権公約では党総裁直属の「政治改革本部」設置や、将来的な廃止も念頭に政策活動費の透明性を確保すると記した。しかし、これでは国民は納得しない。何よりも必要なのは裏金問題の真相究明、政治家の不正を防ぐ政治資金規正法の抜本改正だ。政策活動費の即時廃止も視野に入れる必要がある。
立憲民主党をはじめ野党各党の政権公約は企業・団体献金の禁止、政策活動費の廃止、政治資金規正法の再改正などを掲げている。自民と連立を組む公明党も政策活動費の廃止を打ち出している。いずれも「政治とカネ」に関する国民の厳しい認識を踏まえたものであろう。
自民党が掲げる政治改革の公約が国民の要求に応えるものなのかが問われている。石破首相は9月の総裁選などで「国民に判断材料を示す」と述べてきたが、現在の公約は判断材料となり得ていないと感じる国民もいるはずだ。投開票日までの論戦で、国民の選択基準にかなう方針と覚悟を提示すべきだ。
1970年代の田中角栄元首相の金脈問題、80年代のリクルート事件に代表されるような「政治とカネ」の問題は幾度も繰り返され、政治資金規正法が改正されてきた。それでも問題は後を絶たず、いたちごっこが続いてきた。「政治改革」は中途半端で抜け道が用意されていたのだ。
物価高騰に悩み、暮らしに追われる国民は選挙で「政治改革」を問うことに怒りを覚えていよう。選挙戦を戦う各党はそのことを肝に銘じ、「政治とカネ」問題を根絶する抜本策を論じ合ってほしい。