<社説>復興相の暴言 首相は即刻罷免すべきだ


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 自主避難者の心を痛めつけ、国の責任も放棄した暴言である。謝罪で済む問題ではない。今村雅弘復興相は直ちに辞任すべきだ。

 今村氏は記者会見で、東京電力福島第1原発事故の自主避難者に対し「(避難先からの帰還を)どうするかは本人の責任」と述べた。
 自主避難者の生活圏の一部だった被災地の山や森の除染は、手つかずのままである。自主避難者の多くは、帰りたくても帰れない状況に置かれているのだ。
 その大きな責任は東電だけではなく、甘い安全規制で原発推進政策を取ってきた国にある。今村氏には、その認識が決定的に欠けている。
 今村氏は会見冒頭で「ぜひ戻りたい方がまた戻れるように、帰還に向けた医療、介護、教育等の生活環境の整備について一層の推進を図っていきたい」「平成29年度予算を十分に活用して、被災者の方々が置かれているさまざまな状況に応じた切れ目のない被災者支援に力を入れる」と述べている。
 だが「本人の責任」などの発言は、自主避難せざるを得ない被災者を国は支援しないと突き放すことを意味する。今村氏の本音が出たと断じざるを得ない。
 今村氏は「(不服なら)裁判でも何でもやればいい」とも述べている。あまりに乱暴だ。
 復興庁は「一刻も早い復興を成し遂げられるよう、被災地に寄り添いながら、前例にとらわれず、果断に復興事業を実施するための組織」である。「被災地」には当然「被災者」も含まれなければならない。不服ならば提訴すればいいとの冷徹な言葉に、被災者に寄り添う姿勢はみじんもない。
 国がやることに対しては、被害者であっても文句は一切受け付けないとの姿勢は、沖縄の米軍基地問題とも通底する。
 今村氏は会見で国の責任を追及する記者に「出ていきなさい」と声を荒げた。記者の質問は自主避難者、そして国民の声であることを全く理解していない。
 今村氏がテレビ討論番組で述べた「ふるさとを捨てるのは簡単だが、戻って頑張っていくんだという気持ちを持ってもらいたい」との発言も不適切である。
 今村氏が被災地の復興の責任者として不適格であることは明らかである。安倍晋三首相は即刻、今村氏を罷免すべきだ。