<社説>米艦防護開始 安保関連法を廃止せよ


この記事を書いた人 琉球新報社

 安全保障関連法に基づき自衛隊が平時から米軍などの艦艇を守る「米艦防護」が初めて実施された。米国と北朝鮮との軍事的緊張が高まっている中で、日本が他国との戦争に自ら巻き込まれに行くような行為は厳に慎むべきだ。

 日本国憲法は国際協調主義を取り、安全保障の基本を国連に置く。そして戦争と国際紛争を解決する手段として武力を永久に放棄した。安全保障関連法は、他国を武力で守る集団的自衛権の行使を可能にする。多くの憲法学者が指摘するように憲法違反である。
 今年は憲法施行から70年の節目に当たる。主権者である国民は、憲法の精神に反する安保関連法の廃止を目指すべきだ。
 政府は昨年12月に決定した運用指針で、具体例として(1)弾道ミサイルの警戒を含む情報収集・警戒監視(2)放置すれば日本への直接の武力攻撃に至る恐れがある「重要影響事態」での輸送・補給(3)日本の防衛能力を向上させるための共同訓練-での実施を挙げた。
 武力行使と一線を画すため「現に戦闘が行われている海域」では行わず、武器使用も「極めて受動的かつ限定的な必要最小限のもの」と定めている。
 ただし「自衛隊や米軍などへの具体的な侵害」や「実施中の特異な事象」が発生した場合以外は、活動を公表しないことになっている。運用実態がどこまで検証できるかは見通せないため、なし崩しで運用が拡大する可能性がある。
 武器使用の限定を強調するが、海上自衛隊は米艦防護の任務中に、米軍に対する偶発的な攻撃や妨害行為があれば、武器を使って阻止できる。武器を使用することで戦争の道を開く可能性もある。
 初の米艦防護は北朝鮮に近い日本海側ではなく、米軍が必ずしも自衛隊に守ってもらう必要のない太平洋側で実施した。政府の意図は何か。実施する必要があるのか大いに疑問である。
 ローマ法王は、北朝鮮情勢について「外交手段での問題解決」を求め、戦争になれば「人類が破壊される」として米国と北朝鮮の双方に軍事的圧力の自制を促した。第三国による調停を提案している。
 日本は米国との軍事一体化を加速させるのではなく、憲法の精神を発揮し、国際社会と共に朝鮮半島の緊張を沈静化させる役割を果たすべきだ。