<社説>国連対日報告 国連で基地問題論議に期待


この記事を書いた人 琉球新報社

 新基地建設に反対する市民への日本政府対応は、表現の自由に関する国際的基準から逸脱していることが明らかになった。

 国連人権高等弁務官事務所は、昨年日本を調査した言論と表現の自由に関する特別報告者デービッド・ケイ氏がまとめた対日調査報告書を公開した。
 名護市辺野古の新基地建設や、北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設などに抗議した市民が逮捕されたことについて「政府が過度な権力を行使している」と指摘し、懸念を表明した。
 言論・表現の自由に関する正式な報告書で沖縄に言及するのは初めてだ。日本は国連人権理事会の理事国であり、本来なら模範を示さなければならない。今回の報告に真剣に向き合い、辺野古の新基地建設を断念すべきである。国連で沖縄の基地問題が取り上げられることに期待したい。
 報告書は沖縄平和運動センターの山城博治議長が抗議行動を巡って逮捕され、5カ月間も長期勾留されたことを踏まえ、日本政府に対して「抗議行動に不釣り合いな制限が加えられている」「裁判なしに5カ月間拘束したのは不適切で、表現の自由に対する萎縮効果を懸念する」とした。
 高江のヘリパッド建設現場で記者の取材を警察が妨害したことにも触れ「過度の制限を回避するため(規制の適用に至る)経緯を慎重に見直さなければならない」と指摘した。
 ケイ氏ら3専門家と1機関は2月に、山城議長が逮捕、長期勾留されていたことについて懸念を伝える文書を政府に送付している。
 今回公開された対日調査報告書は6月、スイス・ジュネーブで開かれる第35回人権理事会本会議で発表される。沖縄国際人権法研究会など複数の非政府組織(NGO)は、山城議長を本会議に登壇させ、沖縄の基地問題と人権状況について訴える。
 日本は国連に加盟し1979年に自由権規約を批准している。政治的表現の自由などは公共的な利益を明白に侵害しない限り、最大限尊重されなければならない。批准国の義務だ。
 しかし、政府は「辺野古が唯一の解決策」と主張し、民意を反映した抗議行動に対して、市民を逮捕、勾留を繰り返している。このような姿勢は国際社会で通用しないことを自覚すべきだ。