<社説>オスプレイ緊急着陸 惨事が起きる前に撤去を


社会
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 米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが奄美空港と米軍嘉手納基地に相次いで緊急着陸した。詳しい状況は明らかにされていないが、嘉手納飛行場では緊急車両が出動する事態になった。

 オスプレイは県内外でトラブルが絶えず、かねて欠陥が指摘されてきた。このような軍用機が頭上を飛び交う沖縄の人々は、爆弾を抱えながら生活しているようなものだ。惨事が起きてからでは遅い。オスプレイの配備撤回を強く求める。
 ヘリコプターのような垂直離着陸機能と固定翼機のスピード、長い航続距離を兼ね備えている―というのがオスプレイのうたい文句だ。
 聞こえはいいが、その分、構造が複雑になり、操縦も難しくなる。他の機種よりもパイロットの養成に時間がかかるという。複雑な構造と操縦の難しさが整備ミスや操作ミスに結び付くことは容易に想像できる。
 2017年9月の10万飛行時間当たりの「クラスA」事故率は3・27に達した。配備時の1・65に比べると倍増している。
 最高度の技術を身に付けないと安全に飛行させられないのなら、それだけで危険極まりない存在だ。
 16年12月には、普天間飛行場に所属するオスプレイが名護市安部の沿岸に墜落し2人が負傷した。市街地に墜落していたら人命に関わる大事故になっていただろう。
 その後もトラブルは後を絶たない。普天間所属機は昨年、岩国基地で白煙を上げたほか、伊江島補助飛行場、奄美空港、大分空港、石垣空港に緊急着陸した。オーストラリア東部海上に墜落し3人が死亡する事故も起こしている。今年に入ってからも、うるま市伊計島で部品を落下させた。奄美空港への緊急着陸は4月に続いて今年2度目だ。
 このように問題だらけのオスプレイだが、政府は巨費を投じて米国から購入し自衛隊に配備する計画だ。危険の拡散にほかならず、国民の生命、安全を守るという使命を放棄しているとしか思えない。
 オスプレイの沖縄配備に先立ち、12年に発表された日米合同委員会合意は「22時から6時までの間、飛行及び地上での活動は運用上必要と考えられるものに制限される」と明示したが、実効性はない。「運用上必要―」というくだりがあるからだ。
 1996年に日米合同委員会が合意した「普天間飛行場における航空機騒音規制措置」(騒音防止協定)にも同様の記述がある。今や「規制」とは名ばかりで、米軍の恣意(しい)的な運用にお墨付きを与えた観さえある。
 日米合意の下、オスプレイは昼夜の別なく自由自在に飛行し県民を脅かしている。政府は米国一辺倒の態度を改め、多くの国民、県民の意を体して、配備の撤回を米国に要求してもらいたい。