新産業ビジョン 制度不発の検証も必要だ

 今後の沖縄を担う主産業は何か。選択と強化策の論議が内閣府沖縄総合事務局で始まっている。
 「沖縄地域経済産業ビジョン」の策定作業だ。6月までに方向性を打ち出すという。打たれ強く、実現性の高いビジョンの構築を期待したい。
 政府が策定中の新成長戦略、沖縄県の沖縄21世紀ビジョンとの整合性も含め、新産業ビジョンはポスト沖縄振興計画につながる重要な施策だ。

 論議の中身をのぞくと、「全員参加型経済社会」というキーワードが目を引く。地域経済を発展させるためには、国、地方自治体、産業界、地域コミュニティーが連携して、成長戦略をつくり上げることが必要だと強調している。
 沖縄振興計画は、官主導、官・制度依存型の産業政策との指摘がある。その反省を踏まえ産学官に地域を加えた「産学官地」連携の新ビジョンの構築であろう。
 復帰後の県経済は基地、公共事業、観光の「3K依存経済」と呼ばれた。新ビジョンでは健康、環境、交通の新3Kも論議している。
 医療産業特区の設置構想もある。がん治療などの高度医療施設を設置して、治療と癒やしを兼ねた医療観光の発想だ。
 リゾート地は、リラックスやリフレッシュで発想や発明の転換が不可欠な研究・開発に最適地との視点から、沖縄を「リゾート&リサーチ」拠点にとの提言もある。
 世界同時不況、円高、新型インフルなど「七重苦」にあえぐ沖縄観光の観光客減を食い止める次世代型観光のヒントになろう。
 全国で活躍するアーティストを輩出する拠点として音楽の産業化も興味深い。可能性あふれる沖縄の新産業の政策論議は、心を躍らせるものがある。
 ただ90年以上前にこんな指摘もあった。「従来本県の産業計画は、官民ともに執着心に乏しく、実行力がきわめて薄弱であり、このことが産業不振の原因」。琉球新報の創刊者の1人、太田朝敷の指摘だ。
 現計画も含め戦前戦後を通じ多数の沖縄振興計画が策定されたが、目標とした「自立経済」は100年をすぎても達成できてない。
 計画や政策は実効性があってこそ意味がある。政府が現計画で産業政策の目玉とした観光、自由貿易、金融、ITなどの経済特区はなぜ不発か。制度や政策不備の検証なしには新ビジョンも危うい。