パワハラ対策 相手いたわる心さえあれば

 職場でのいじめや嫌がらせに関する労働相談が増加している事態を踏まえ、上司のパワーハラスメント対策などについて話し合う円卓会議を厚生労働省が7月中に発足させる。労使の代表や専門家による突っ込んだ議論で、有効な防止策を打ち出してもらいたい。

 部下に過重な仕事を押し付けたり暴言を吐いたりする「パワーハラスメント」などが絶えないのは他人をいたわり思いやる心を持たない上司が少なくないためだ。鍛える目的であっても、乱暴な態度で威圧したのでは貴重な人材をつぶしかねない。
 人はそれぞれ能力や適性が異なる。自分ができたのだから部下もできるはず、という思い込みは禁物だ。鋳型にはめるよりも個性を伸ばすことを考えた方がいい。苗の生育を促そうと無理に引っ張ったのでは枯れてしまう。焦らず長い目で見る必要がある。
 パワハラをなくすには管理職の意識改革が欠かせない。個々の人格を尊重し、愛情を持って部下や同僚に接する姿勢が何よりも大切だ。経営陣が率先して模範を示せば、いじめや嫌がらせは確実に減るだろう。仕事に厳しさを求めるのは当然だが、人への優しさを失ってはならない。
 厚労省によると、2010年度に労働基準監督署などに寄せられた、職場での「いじめ・嫌がらせ」の相談は3万9400件余に上る。上司とのトラブルなどがきっかけでうつ病などを発症するケースも少なくない。精神疾患の増加による社会的な損失を考えると、職場でのいじめやパワハラの害悪がいかに大きいかが分かる。
 家庭で「いじめはいけない」と子どもに教えているであろう大人が、職場で部下や同僚をいじめる。そんないびつな社会に明るい未来は期待できない。
 悪意をもって嫌がらせを続けるようなケースは論外だが、上司の指導が高じてパワハラと受け取られる言動に及んだ事例については十分に改善の余地がある。
 厚労省の円卓会議は、メンタルヘルス、労務管理、法律の専門家やパワハラ対策に成果を挙げている企業経営者らが加わり、11年度内に提言をまとめるという。
 円卓会議の結論を待つまでもなく、各企業は、それぞれの職場環境に合った、いじめ・嫌がらせ防止策を独自に策定し、実行してもらいたい。