12衆院選 消費税/徹底検証と見直し論議を


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 前回総選挙で全く争点にならなかった消費税増税法が成立し、現行の5%から2014年4月に8%、15年10月に10%へと2段階で引き上げられる。
 一方で、増税と一体とされた社会保障改革は多くが棚上げされ、先送りされた。
 今回の衆院選では、国民に対する不意打ちにも等しい増税の是非や、民主、自民、公明の3党が密室で決めた政治手法についても、厳しく審判を下す必要があろう。

 国民の暮らしを直撃する消費税増税の是非について、本来ならば、政権を争う自民と民主が激しく論戦を戦わせるべきだが、増税は既定路線とばかりに、頬かぶりを決め込むかのような姿勢は、残念と言うほかない。
 両党のマニフェストで消費税増税に関する記述を見ると、民主は「消費税はすべて社会保障の財源に充て社会保障を充実させる。消費税率の引き上げに合わせ低所得者対策に万全を期す」、自民は「消費税は全額、社会保障に使う」などとあるが、必要最低限の説明にとどめている印象は否めない。
 “増税隠し”の意図があるとすれば、国民を二重に裏切る行為であり、到底許されない。選挙戦を通じて明確な説明を求めたい。
 消費税増税を強行するならば、無駄を徹底して省く歳出削減策がセットになってしかるべきだが、この点も極めて具体性に乏しい。
 とりわけ自民と公明は公共事業の拡大を目指しており、各党から「ばらまきだ」と批判を受けている。これでは国民の身を削り取るように増税しても、ざるに水を注ぐようなものだ。財政再建など望むべくもないと認識すべきだ。
 忘れてならないのは、消費税増税法には「景気条項」として、名目3%、実質2%の経済成長率の数値が盛り込まれていることだ。「あくまでも努力目標」との指摘もあるが、客観的な景気判断に基づき、増税の最終判断をするという手順は何ら変わらないはずだ。
 ましてやデフレ不況下での増税は、消費や投資に壊滅的な影響を与えるのは目に見えており、強行することなどあってはならない。
 7~9月期の国内総生産は3四半期ぶりにマイナス成長となるなど日本経済の景気後退が鮮明となる中での今衆院選だ。消費税増税は決して既成事実ではない。徹底した検証と見直し論議も必要だ。