12衆院選 雇用・生活再生/内需拡大へ「質」の改善を


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 このデフレ不況はいつまで続くのか。格差社会はさらに広がるのか。国民の多くが、先行きが見えない、長いトンネルの中にいる。雇用・生活の再生をいかに図るかが各党に強く問われている。

 デフレ不況の大きな要因は、雇用環境の悪化を背景にした、個人消費の慢性的な低迷だ。
 小泉政権下の規制緩和以降、非正規雇用が増える一方で労働者の所得は伸びず内需の冷え込みを招いたと指摘される。その意味で各党とも「小泉構造改革」の検証は不可欠だ。その上で雇用と内需拡大の具体策を提示することが求められている。
 厚労省の国民生活基礎調査によると、2011年の雇用者に占める非正規労働者の割合は前年比1・5ポイント増の38・8%に上る。同省の12年版労働経済白書は、賃金を引き上げて「中間層」を増やすことで個人消費の拡大を促すべきだとし、正社員化を進めることを提言した。傾聴に値すると思う。
 雇用対策に関して、例えば民主党は、再生可能エネルギーや医療・介護の分野などで2020年までに400万人以上が働ける場をつくると打ち出している。
 確かに雇用創出は重要だが、もっと大事なのはその質だ。新たな雇用の場が非正規中心ならば、内需は喚起できない。非正規雇用の割合を減らす、さらに踏み込んだ対策が必要ではないか。
 自民党などは、公共投資の拡大や規制緩和で経済成長を図り、雇用を創出する主張に見える。そこでも肝心なのは雇用の質であり、格差社会を是正し「中間層」を充実させることができるか否かだ。
 基礎調査によると、2010年の世帯所得の平均は前年に比べ13万円余も減った538万円で、1988年同様の低水準だ。多くの国民が「生活苦」を感じている。特に子育て世代で顕著だ。これでは財布のひもは固くなる。
 こうした中、最低賃金制度見直し論や生活保護給付金引き下げ論も出てきている。しかし、セーフティーネットを危うくすることは景気にもプラスには働かない。それに信頼や安心感が持てないと、国民は一層、消費よりも貯蓄に比重を置く。内需は硬直化し、デフレの悪循環は深まるばかりだ。
 雇用と生活の質を置き去りした経済政策は社会の空洞化を招くだけだ。各党とも真の「再生」に向けた道筋を国民に示してほしい。