自民政権奪還/暮らしの課題解決を 在沖基地押し付けは限界


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 第46回衆院選で自民党が大勝した。政権奪還は確実だ。
 2005年の郵政選挙での自民党、09年の政権交代時の民主党にも匹敵する地滑り的圧勝だ。とはいえ前2回に比べ、高揚感に欠ける感も否めない。投票率の歴史的低さがそれを物語る。選挙結果は、自民党が期待を一身に集めたことの表れというより、民主党への失望の反映と言えよう。

 国民は社会保障の確立や雇用の増大など、暮らしに密着した課題の解決を切実に望んでいる。安倍晋三自民党総裁が新首相に就任するのは確実だが、安倍氏には、真に国民が望む政策を着実に実行するよう望みたい。

論点が拡散
 それにしても、これほど選択基準が分かりにくかった総選挙も珍しい。消費増税、原発、環太平洋連携協定(TPP)などは各党で賛否が分かれるだけでなく、手法にも細かな違いがあった。例えば同じ「脱原発」でも、ゼロにするのはいつの時点か、さまざまだ。
 加えて憲法改正、国防軍、果ては徴兵制まで持ち出されており、どれが争点か、論点は拡散した。
 各党が掲げる政策自体も猫の目のように変わった。
 原発をめぐる政策がその筆頭だ。政府は1月、原発の運転期間を事業者の申請で最長60年まで認める方針を打ち出した。事実上の「原発推進」だ。ところが討論型世論調査で脱原発の民意が根強いと知ると民主は選挙前に一転、「2030年代に原発ゼロ」と記すエネルギー・環境戦略を策定した。だが米国が批判的と知るや、今度は閣議決定を見送った。
 日本維新の会も当初は脱原発を掲げたが、石原慎太郎氏を党首にする際、その旗を降ろした。
 腰の定まらない姿は自民にも共通する。14年4月からの増税をうたう消費増税法の可決に賛成したが、総選挙に入ると安倍総裁は「来年秋に判断する」と言い始めた。TPPへの姿勢も不透明だ。こうした「見えにくさ」が有権者を戸惑わせたのだろう。
 何よりも、政権公約をことごとくほごにした民主党が、政治への信頼を根本から失わせていたのは間違いない。現職閣僚落選が過去最多だったことからもそれは明らかだ。歴史的な低投票率を招いた責任は重い。
 今回の選挙をめぐり共同通信社が実施した5回の全国電話世論調査によると、有権者が重視する課題は「年金や医療など社会保障」と「景気や雇用」が常に1位、2位を占め、他を引き離した。有権者の望みのありかは明確だ。自民党はそれを銘記してほしい。

行き詰まりの直視
 選挙戦で自民は「日米同盟強化」をうたったが、それが米軍基地の沖縄押し付けを意味するなら誤りだ。過去17年、普天間飛行場返還が失敗し続けた事実から目をそらせてはいけない。そしてそれは、過去3年は民主の責任だが、それ以前の14年は自民の責任であることを忘れてはならない。
 翁長雄志那覇市長は「自民党政権になっても辺野古移設反対に決まっている」と明言する。仲井真弘多知事も「どんな政権が生まれても主張を変えず(普天間基地の県外移設)実現に向け努力する」と述べた。基地押し付けを拒否する沖縄の意思はもはや後戻りできない地点に来ている。
 行き詰まりを直視するなら、基地政策の大胆な見直しが必要だ。それは日米関係の見直しに直結しよう。米国の言いなりでなく、自主的かつ対等な交渉が求められる。民主党は明らかに力不足だった。自民党だからこそ、見直しに果敢に挑戦してもらいたい。
 政権党なら、21世紀末まで持続可能な日米関係を構想すべきだ。まずは在沖米海兵隊の撤退ないし県外移設が最優先だろう。
 県内の自民党衆院議員も選挙後が本番だ。過去、党中央の基地政策の過ちを改められなかったことを反省し、今度こそ党中央を正しい方向に旋回させてほしい。