新春彩る円熟の舞 琉舞名人選


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 国立劇場おきなわ企画の琉球舞踊公演「新春琉舞名人選」が19、20の両日、浦添市の同劇場で行われた。

県指定無形文化財「沖縄伝統舞踊」保持者の踊り手ら30人が出演、古典舞踊や雑踊、創作舞踊を踊った。華やかな雰囲気の中、熟練の舞いの数々で新春を彩った。地謡は多くの演目で中堅・若手が務め、ベテラン踊り手を引き立てた。19日の公演を取材した。
 公演の幕開けは金城清一・高江洲清勝「かぎやで風」、海勢頭あける「女こてい節」や斉唱「よらてこ節」。首里城正殿を背景画に格調高い雰囲気で始まった。
 女踊は又吉世子「稲まづん」、山城洋子「天川」、古謝弘子「諸鈍」、花岡勝子「作田」、島袋恵美子「瓦屋」、船越節子「本花風」。各踊り手が指先まで神経が行き届いた細やかな手踊りや、三角目付や月見手など女踊の技法を丁寧に表現した。花岡の「作田」は紅型衣装ではなく、紅型以前に使用されていたとされる「琉縫薄衣装」を着用。団扇ではなく、クバ扇を手に自然体で舞った。
 二才踊は池原勝子「ぜい」、宮城豊子「前の浜」、漢那七子「高平良万歳」。きびきびとした動きや力強さを披露した。雑踊は大城和子「浜千鳥」、宮里敏子「取納奉行」、安次富紀子「むんじゅる」、比嘉美好・金城光子「鳩間節」。しなやかな手踊りやリズミカルな音楽に乗せた軽快な踊りなどで楽しませた。
 全体を通し、ベテランの味が出た踊りで魅了。一部で重心のバランスを崩したり、曲調に合わせた軽やかさがもっとほしいと感じる演目もあった。
 20日は我那覇則子「稲まづん」、嘉数紀美子「かせかけ」、渡久地美代子「前の浜」、金城道枝「瓦屋」、玉城千枝「伊野波節」、比嘉涼子「本花風」、宜保雅子「作田」、金城千壽子「秋の踊り」、眞境名結子「男加那よー」、山田多津子「諸鈍」、玉城靜江「取納奉行」、宮城能造「花風」、島袋君子「高平良万歳」を披露した。
 毎年恒例の「新春琉舞名人選」。家元・会主クラスの踊り手らが次々に披露する円熟の舞いは見応えがある。その半面、一人踊りを中心に舞踊が続く展開だけでなく、変化があっても良いのではないか。
 例えば演目を検討した上で、踊り・衣装の背景、踊り手や流派による特徴などの解説も視覚的に取り入れるなど、琉球芸能を見る機会が少ない人も関心を持てる工夫はできないか。そのことで、踊りもさらに引き立つのではないかと感じる。(古堅一樹)

指先まで神経が行き届いた古典女踊「天川」を舞う山城洋子=19日、浦添市の国立劇場おきなわ
「琉縫薄衣装」を着用しクバ扇を手に「作田」を踊る花岡勝子=19日、浦添市の国立劇場おきなわ
息を合わせ「鳩間節」を披露する比嘉美好(左)、金城光子=19日、浦添市の国立劇場おきなわ