ネット選挙解禁 悪用防ぎ長所を伸ばそう


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 与野党全11党は、インターネットを使った選挙運動の全面解禁方針で一致した。夏の参院選から、交流サイト「フェイスブック(FB)」や短文投稿サイト「ツイッター」を含むウェブサイト使用が可能になる見通しだ。

 与野党は今後、電子メール使用の可否や、候補者成り済ましに対する罰則規定などに関する協議を詰め、改正公選法の3月中の成立を目指す。日進月歩で進化するネット社会の実態に即した、公平公正な制度構築へ向け、丁寧な作業を求めたい。
 スマートフォン(多機能携帯電話)の普及も相まって、情報発信・入手の手段としてインターネットは国民の多くに定着した。ネット選挙は候補者や政党の主張を広く伝えられ、新たな支持層発掘など投票率向上も期待できるとして、解禁を求める声は高まっていた。
 昨年の衆院選では、日本維新の会の橋下徹共同代表が衆院選公示後もツイッターで選挙制度や政策に関する発信を続けるなど、ネット活用がなし崩しになっている側面もあった。公選法はネットの選挙運動を禁止しているが、明確な基準がないため、野放しに近い状態だった。制度がようやく高度情報化社会に追い付くことになる。
 ただ、ネット選挙解禁は喜ばしいことばかりではない。各党が最も懸念するのが「候補者成り済まし」だ。例えば、対立する相手候補の氏名や写真を使ってツイッターを開設し、暴言や失言を繰り返せば、当落に関わるダメージを与えることも可能だ。
 ネット上では文章や写真の転送が容易なため、いったん書き込まれた誹謗(ひぼう)中傷が拡散し、削除しきれない事態も想定される。韓国は昨年からFBなどを使った選挙が解禁されたが、大統領選ではネガティブキャンペーンが激化する温床になったとの指摘もある。
 金の掛からない選挙のはずが、各陣営は誹謗中傷の監視など、ネット対策に人員や費用を割かれる懸念もある。
 自公両党の公選法改選案では、サイト上の名前などを虚偽表示した場合、公民権停止や禁錮刑の罰則を科す。このことからもネットの悪用をいかに抑制するかが、最大の課題であることは明白だ。
 もちろん問題が多発し、対応が後手に回る事態も想定される。朝令暮改をためらわず、一長一短があるネットの実態に即して、制度を不断に見直す覚悟も必要だ。