米識者の見解 際立つ日本の思考停止


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 価値ある情報が有効に活用されるか否かは、それを得る側の問題意識に大きく左右される。

 異論であったとしても、問題の本質を突いた情報に耳を傾けないならば、あるべき姿を見失うだろう。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をごり押しする日本政府の対応がそう映る。
 米シンクタンク、新米国安全保障センターのクローニン氏が辺野古移設計画の再検証を求める見解を示した。
 「沖縄と戦略の責任」と題する提言で、クローニン氏は代替基地の滑走路が短いとし、県民世論の反対が根強いことを理由に挙げている。普天間問題を「非常に深刻で、(日米の)枢要な安保関係をむしばんできた」と指摘している。
 日米安保体制の重要性を踏まえた識者が、事故や環境破壊への懸念も含めた沖縄の反発を、中長期的に日米関係を揺るがす材料とみなしている。重要な視点である。
 普天間問題が16年余りも行き詰まりから脱せない原因は、沖縄の民意を無視する形で一方的に日米両政府が合意を取り交わし、推進姿勢を維持してきたことにある。
 沖縄の民意を反映しない県内移設案の実現性を困難視する点で、クローニン氏の見解は的を射ている。同氏にとどまらず、日米の安全保障関係に詳しい米側識者から、辺野古移設強行に疑念を呈する見解が相次いで繰り出されている。
 米識者の“地殻変動”に目を背け、辺野古に固執する日本政府の姿勢は頑迷と称する域に達していまいか。政策の合理性を担保する視野の広がりを欠いている。
 日本研究の重鎮であるジェラルド・カーティス米コロンビア大教授は「県民が辺野古移設を受け入れる可能性は極めて低い」とし、米政府に沖縄の軍事プレゼンスの迅速な削減を求めている。
 知日派の重鎮とされるジョセフ・ナイ氏(元米国防次官補)も「(県内移設計画が)沖縄の人々に受け入れられる余地はほとんどない」とし、在沖海兵隊の豪州移転を「懸命な選択だ」としている。
 在沖海兵隊の抑止力の虚構性を挙げ、米本土に撤収しても抑止力は維持できるとする見解も増えた。沖縄の民意を反映した解決策を探る米識者らの対極にあるのが、思考停止に陥って久しい日本政府だ。
 惰性を排し、曇りのない目で現状を見つめるならば、普天間合意を見直すしかなかろう。