沖縄政策協議会 アメとムチは時代錯誤だ


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 振興策と基地問題を絡める「アメとムチ」の愚策をなおも繰り返すつもりか。非民主的で人道に反する施策をごり押ししても根本的解決にならないことを、いいかげん悟ってもいいころだ。

 安倍政権では初の沖縄政策協議会が開かれた。安倍晋三首相と全閣僚、仲井真弘多知事が出席し首相からは沖縄の基地負担軽減と沖縄振興に努める意向が示された。
 政府は沖縄側の強い反発にもかかわらず、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を進める方針を堅持しており、今月中にも辺野古沿岸部の埋め立て許可を知事に申請する見通しだ。
 安倍首相は丁寧な説明で沖縄の理解を得たいと繰り返すが、県内移設を拒絶する民意を一切顧みることなく、辺野古移設を強行したところで、沖縄の理解も納得も得られるはずがないことは自明だ。
 安倍政権は、協議会の下部組織として、民主党政権時代に設置された「米軍基地負担軽減」「沖縄振興」の両部会を一本化し、小委員会を新設した。菅義偉官房長官は両部会について「振興と基地負担軽減は別だという建前論だったのではないか」とリンク論をあからさまにしたが、見識を疑う。
 沖縄の主張は明快だ。県民世論に反して沖縄に過重な基地負担を強いることは「構造的差別」にほかならず、差別の解消なくして民主国家たり得ない-という点に尽きる。基地問題に振興策を絡めるのは、社会問題あるいは社会科の問題を数学の方程式で解くような甚だしいボタンの掛け違いだと言わねばならない。
 安倍首相は協議会で「抑止力を維持しつつ負担軽減に全力で取り組む」とも述べた。地理的優位性や抑止力という言葉が、沖縄に基地を置き続けるための方便であることは、海兵隊がアジア・太平洋諸国を巡回訓練する運用の在り方一つとってみても明らかだ。米国の上院議員や安全保障の専門家の間にも沖縄の現状や辺野古移設計画に懐疑的な見方が出ている。
 賢明な首相や閣僚はとっくに気付いているはずだが、外務、防衛官僚の言い分をうのみにし、あえて見て見ぬふりを決め込んでいるとしか思えない。
 これでは全閣僚をそろえた協議会を開いても、ガス抜きにさえもならない。貴重な時間と労力を浪費する茶番は即刻終わらせ、普天間移設問題の抜本解決に向け、直ちに米国と再協議に入るべきだ。