「主権回復」首長意向 「祝賀」式典は中止を


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 県議会が4月28日の「主権回復の日」式典開催への抗議決議を全会一致で可決した。県内の市町村議会でも、式典への抗議決議や意見書を可決する動きが顕著だ。

 琉球新報が県内41市町村の全首長を対象に実施した「主権回復の日」に関する緊急アンケートでは、式典開催については約8割が反対し、賛成はいなかった。
 沖縄は民主主義の手法を尽くして、式典の見直しを求めているのだ。政府はこの事実を重く受け止めるべきだ。
 サンフランシスコ講和条約で、日本の独立と引き換えに沖縄が日本から分離され、米軍統治下に置かれることになった。条約が発効した1952年4月28日を、沖縄では「屈辱の日」と呼ぶことを知らない首長はいまい。「主権回復」と肯定的に捉える式典に賛成する首長がいないのは当然だ。
 安倍晋三首相に問いたい。この結果を見ても式典を開催するのだろうか。このまま式典を強行すれば、どんな言葉で取り繕うとも、沖縄差別は決定的となる。「主権」の現状について徹底検証することこそ先決であり、式典開催を強行すべきではない。
 日本が真の民主国家であり、沖縄の声に理解を示す気持ちがあるならば、式典開催を見送るのが筋だ。式典は「国際社会復帰60年」を記念したものでもある。対米追従外交を繰り返し、日米地位協定の不平等性を放置しているのに、果たして「主権回復」と胸を張れるのか。
 政府が国会議員に参加を呼び掛けた案内状は、沖縄や奄美、小笠原が米国の施政権下に置かれたことにも、いびつな主権国家としての現実にも触れず「わが国の完全な主権回復」などと記述する。全く理解に苦しむ。
 安倍首相や菅義偉官房長官は「沖縄県の苦難の歴史を忘れてはならない」と繰り返していたが、あれは一体何なのか。結局、沖縄への配慮はうそなのか。こうした場当たり的な姿勢に、どれだけ県民が失望し、憤っているかを想像してもらいたい。
 アンケートでは仲井真弘多知事の式典出席には6割以上が「出席すべきでない」としている。知事が当初、式典を「全く理解不能」と批判したことに、多くの首長が共感していると見ていい。知事は毅然(きぜん)と欠席を表明し、抗議の意思を伝えるべきだ。

英文へ→[Editorial] Heads of all municipalities in Okinawa demand that the commemoration of the anniversary of the restoration of Japanese sovereignty be stopped