1票の格差判決 改革先送りは許されない


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 昨年12月の衆院選の「1票の格差」をめぐり、最高裁大法廷は「違憲状態」とする判決を言い渡し、選挙無効を求めた原告側の弁護士グループの訴えを退けた。

 1票の格差を長期間にわたって放置し続ける政治の不作為に、司法がお墨付きを与えたも同然であり、甚だ理解に苦しむ。
 今回の全国訴訟における各地の高裁判決は、16件中14件が「違憲」「違憲・無効」だった。それだけに違憲判断を避けた最高裁判決は、選挙制度改革の機運をそいでしまうと強い危惧の念を抱かざるを得ない。
 一方で今回の判決は、2009年衆院選をめぐる前回最高裁判決と同様に、現行の選挙制度の構造的な欠陥を指摘した。代表民主制の根幹をないがしろにする1票の格差の是正は待ったなしだ。国会は怠慢のあぐらをかき続けることは許されない。各党各会派は、議員定数削減を含む抜本的な選挙制度改革に直ちに取り組むべきだ。
 昨年12月の衆院選は、最高裁が違憲状態とした09年と同じ区割りで実施され、2・30倍だった最大格差は2・43倍にまで広がった。解散当日に衆院小選挙区定数を0増5減とする関連法が成立したが、新たな区割りは間に合わなかった。ただ0増5減を実施しても最大格差は1・998倍とされ、司法が求める2倍未満ぎりぎりに収めるための小手先の対応にすぎない。
 にもかかわらず、今回の最高裁判決は0増5減を「一定の前進」と評価し、国会に幅広い裁量があることを認めた。あまりに立法府への遠慮が過ぎないか。司法の独立に対する国民の信頼を損ないかねない。
 思い返してほしいが、自民、公明、民主の3党は昨年11月の衆院解散の際、消費税増税に伴う「身を切る改革」として衆院議員定数の削減を約束した。だがこれも一切手つかずのままだ。自公が比例代表のみの削減を掲げているのに対し、民主は小選挙区も含めた削減を主張し、議論が平行線をたどっているためだ。政治が党利党略を優先させ、自浄能力を著しく欠いた現状は、即刻改められなければならない。
 自民党内には「今回の判決で格差是正の議論は一段落」(細田博之幹事長代行)と安堵(あんど)の声も漏れる。しかし違憲状態の判決は抜本改革先送りの免罪符では決してない。国民が身を切る改革を注視していることを忘れてはならない。