秘密法と沖縄 悪法で憲法壊すのか 過重負担を強要するな

 特定秘密保護法案をめぐる攻防は今週、ヤマ場を迎える。法案に対し国民各層から民主主義を破壊する悪法との批判が噴出している。

 この法案は国民の「知る権利」やこれを支える取材・報道の自由を脅かすだけでなく、基本的人権の尊重など憲法上の諸権利と衝突するのは明白だ。「違憲立法」の疑念を拭えない。廃案にすべきだ。
 外交、防衛関連の情報が過剰に「特定秘密」に指定されて米軍基地への監視の目が届きにくくなり、結果的に県民の過重負担が増幅するだろう。沖縄の人権状況を悪化させる反民主的な法案に反対する。

官僚の利敵行為

 日米間には米公文書で判明した秘密合意が山ほどある。記憶に新しいのは内部告発サイト「ウィキリークス」が2011年5月に暴露した米公電だ。
 米軍普天間飛行場の返還・移設問題で政権交代を果たした当時の民主党政権が「県外移設」を模索していたのに対し、2009年10月、高見沢将林・防衛政策局長がキャンベル国務次官補らに「米側が早期に柔軟さを見せるべきではない」と助言。鳩山政権が模索した「県外移設」を官僚が阻んだも同然で、これは明らかな外交上の利敵行為であり、罪深い。
 古くは沖縄返還協定が調印された1971年、毎日新聞記者だった西山太吉氏が外務省の機密公電のコピーを入手し、「米側による400万ドルの原状回復費の自発的支払い」の返還協定に反し、日本政府が秘密裏に費用の肩代わりを示唆した記述を基に「対米請求処理に疑惑」などと報じた。
 2010年3月、日米密約を検証した外務省の有識者委員会はこの密約の存在を認定し、歴代政権の虚偽答弁を断罪した。
 森雅子少子化担当相が秘密保護法案を審議中の委員会で、沖縄密約を暴き裁判で有罪となった西山氏の報道が特定秘密保護法の処罰対象になると答弁したのは疑問だ。
 沖縄密約裁判は、政府間の密約の是非が問われるべきところを、西山氏が女性事務官に働きかけて情報を入手したとして男女間の問題にすり替えられた。森氏は裁判の本質に背を向け「沖縄密約」報道を処罰対象と断じた。血税の不正支出を棚に上げた森発言は、国民の知る権利や取材・報道の自由への配慮を欠き極めて危険だ。
 1997年、琉球新報が48の米軍施設・区域の範囲や使用目的、使用条件などを定めた「5・15」メモ、「施設・区域の個々の覚書」の英文・和文の全文を入手し特報した(一部は78年に公開)。

自由使用のお墨付き

 同メモによると、例えば米軍嘉手納、普天間両飛行場は航空機の運航規制など実質的な使用条件は皆無。このメモは事実上、米軍による基地の自由使用、傍若無人な基地運用にお墨付きを与えた文書であり、これを長く隠してきた政府の対応は犯罪的だ。
 このほか、在日米軍の法的地位などを定める日米地位協定は、表向きの条文とは別に「解釈」によって対米譲歩を重ねる秘密合意の存在が、報道や研究者によって数多く明らかになっている。
 米軍基地の過重負担に苦しむ沖縄県民には、基地運用の実態を知る権利があり、報道にはこれに応える責任がある。歴史の真実を追求する研究者の営みもしかりだ。それが秘密保護法案の成立によって厳罰対象になるなら、言論の自由、学問の自由は危機に陥る。
 閣僚や官僚が政府にとって都合の悪い情報を恣意(しい)的に「特定秘密」に指定し、秘密情報を肥大化させていけば、この国は遠からず国民主権の民主国家ではなく、官僚主権の全体主義国家に成り下がるのではないかと危惧する。
 この国は、国民の知る権利を奪い、なおも密約外交を続けるのか。秘密保護法案は、この国の民主主義や憲法を死滅させる危険性が高い。法案は廃案にすべきだ。同時に国民の下支えのない「見せかけの同盟」から脱し、民主的な安保の在り方を真剣に追求すべきだ。