憲法解釈変更試案 戦争する国への暴走許すな


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 政府が集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈変更の試案をまとめていたことが分かった。憲法9条の下で許容される「必要最小限度」の自衛権行使の範囲に集団的自衛権の行使も含まれるとの論理構成にしている。試案は首相補佐官が作成し、安倍晋三首相の諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」に示した。これまでの政府解釈を根底から覆す試案を、憲法尊重義務のある首相補佐官が作成すること自体、大きな問題だ。

 安倍首相はこれまで、憲法解釈を変更するかについては「懇談会の結論を待つ」と繰り返し答えてきた。なぜ首相側から懇談会の議論を誘導するような試案を出すのか。最初から結論ありきの茶番劇を演じているのではないか。
 政府は集団的自衛権について、これまで「国際法上保有している」としながらも、平和主義を掲げる憲法9条に照らして行使は「防衛の必要最小限度の範囲を超え、許されない」と解釈してきた。解釈を長年築いてきたのは歴代の自民党政権だ。国会で議論を重ね、自衛・有事に関わる法作成や可否の前提となっていた憲法解釈を容易に覆せるなら、法治主義・議会制民主主義の根幹が揺らぐ。
 懇談会の柳井俊二座長は議論再開前の8月に「行使できるという解釈が基本的な考え方。答えは出ている。今の条文でも行使できると読めるのに、制限的に解釈していた」と述べ、集団的自衛権の全面容認を表明している。意見交換をする前に結論が出ているのなら、懇談会にどんな意味があるのか。
 安倍首相は集団的自衛権行使で「地球の裏側で米国と一緒に戦争するわけではない」と説明する。しかし内閣官房副長官補は自民党会合の場で「地球の裏側であれば日本に全く関係がないかというと、一概に言えない」と述べ、日本周辺以外の遠隔地に派遣される可能性を示唆している。
 懇談会座長代理の北岡伸一国際大学学長は自衛隊の活動範囲について「乱暴に言えば、地球の外だって論理的にはあり得る。宇宙だってどこだって行くかもしれない」と述べている。おぞましい暴論だ。
 懇談会は来年にも、集団的自衛権行使を全面的に容認する報告書を政府に提出する。その後、政府は閣議決定に踏み切るようだが、戦争ができる国へと歩む暴走を許すわけにはいかない。