<社説>アジア経済戦略 現代版「万国の津梁」目指せ


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 翁長雄志知事が経済政策の柱に据える県アジア経済戦略構想がまとまった。

 国際物流機能を拡充するため返還されていない那覇軍港や陸上自衛隊駐屯地用地の活用を盛り込むなど、自立に向け積極姿勢を打ち出した。構想が画餅に終わらないよう、着実に形にしたい。
 アジア開発銀行(ADB)の報告書によると、2050年までのアジア経済は中国やインドが順調に成長を続けた場合、世界総生産(GDP)に占めるアジアの割合は現在の27%から52%まで拡大する。アジアの1人当たりGDPは現在の6倍に当たる約4万ドルに達し、新たに30億人が富裕層になる。
 人口増を伴うアジアの成長を、沖縄の経済発展に結び付ける見取り図が今回の戦略構想だ。
 同構想は(1)国際競争力ある物流拠点の形成(2)世界水準の観光リゾート地(3)航空関連産業クラスターの形成(4)国際情報通信拠点の形成(5)新たなものづくり産業の推進-の五つの柱からなる。
 沖縄はアジアに近く地理的優位性があるといわれて久しいが、空港周辺でビジネスを展開できない「拡張性のなさ」が指摘されてきた。このため構想(1)で、空港に近い那覇軍港や自衛隊駐屯地を活用し、増え続けるヒトやモノの受け入れ体制を整え、臨空型物流拠点を形成・拡大するために、最優先事項として掲げる。
 構想(2)の重点戦略の「世界水準の観光リゾート地への実現」で、拡大するクルーズ市場の獲得や、アジアの富裕層の獲得を目指す。
 構想(3)の航空関連産業クラスターの形成は、国産初の小型ジェット旅客機の重整備拠点や、航空会社からの緊急要望に対する対応(AOG)センターの整備を明記している。付加価値の高い航空産業を誘致することで、労働市場を形成し新たな雇用や経済成長につなげる戦略だ。
 構想(4)の国際情報通信拠点の形成で、16年4月からの海底光ケーブル運用開始を目指す。敷設されている首都圏とアジアを結ぶ海底光ケーブルを沖縄に陸揚げし、利用者に低価格で高速大容量通信サービスを提供する。このインフラ整備で国内外の情報通信業を沖縄に誘致する。
 アジア戦略構想で示された沖縄の将来の見取り図が実現すれば、沖縄は現代の「万国の津梁」となるであろう。