<南風>この地で一粒万倍に


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 宮古島の県立宮古総合実業高校の「水」と「食」のり組みをご存じだろうか。サトウキビを収穫した後、植え付けまでのあいている期間に日本そばを無農薬・有機栽培することで、地下ダムの汚染を食い止めようと、約10年前に始まったプロジェクトである。3カ月という限られた期間に何を栽培するのが一番良いのか、さまざまな種を播(ま)き、試行錯誤した結果、日本そばが最も適していることが分かったそうだ。

 故郷の水を農薬でこれ以上汚染したくないという彼らの想(おも)いと行動力に感動した。浮島ガーデンではこの日本そばの実をハンバーグやつくねといったメニューに、お肉代わりに使わせてもらっている。
 私たちの体は住んでいる土地と切っても切り離せない「身土不二」だ。大地が汚染されれば私たちも病気になる。そして「食べる」という誰もが行う毎日の行為が、住んでいるこの土地を良くもし、悪くもする。浮島ガーデンが徹底して沖縄県産無農薬野菜にこだわっているのは、そのためだ。
 何を食べるかで自分自身の未来も変えることができる。私自身、食を正したことで病気をしなくなり、未来が大きく輝きだした。想像を超える嬉(うれ)しいミラクルも起きる。来年2月、京都で2店目をオープンすることが決まった。沖縄店は一層、地域の農家さんと連携を深め、農業イベントや、毎月第2日曜日に店内で行っている「ハルサーズ・マーケット」を盛り上げていきたい。4月には「アースデー沖縄」、5月には第3回となる食の映画祭「まーさん映画祭」を桜坂劇場で行う予定だ。同時に雑穀栽培にも力を入れ、未来のために一粒万倍貯金をしてゆきたいと思っている。
 この30年、沖縄に恋い焦がれてきた。出自を超える郷土愛が私の活動の根っこにある。命ある限り、この地のために働いてゆきたい。
(中曽根直子、風土コーディネーター)