<南風>「地毛登録申請書」


社会
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 2年前の今頃、県立高校に入ったばかりの娘が浮かない顔をして私に1枚の紙を見せた。「地毛登録申請書」。学校長宛てに生徒と保護者が連名で届け出る形式で、そこには、「上記の生徒は地毛申請の登録をします。つきましては、下記の注意事項をよく読み、校則を厳守し高校生活を有意義に過ごす事を誓います 記1.染髪、パーマ(ストレートパーマ含む)等はしないことを誓います。※染髪、パーマ(ストレートパーマ含む)等をした場合は登録取り消しとなります」とあった。

 驚いて「こんなものを高校生にもなってみんなに提出させるの」と言うと娘は「クラスで渡されたの、私だけ」と答えた。一瞬血の気が引いた。娘によると入学して最初のテストの際、見回りの先生が生徒の頭を上から観察して赤毛やくせ毛の子をチェックし、対象生徒を指導室に呼んで申請書を渡していると言う。絶句するとともに胸が痛んだ。娘が生まれながらに持っている大切な身体を否定された気持ちになった。

 その年の7月、那覇市は「性の多様性を尊重する都市・なは」宣言を全国に向け発表した。宣言文の前段にはこう記述された。「人がどのような性を生きるか、また、誰を愛し、愛さないかは、すべての人が幸福に生きるために生まれながらにして持っている権利、すなわち人権であり、誰もがその多様な生き方を尊重されなければなりません」。この宣言の性を生と読み替えてみたところ、シングルマザーとしてとても勇気付けられた。

 果たして私たち大人は、偏見や差別のない、互いに認めあう社会を本気でつくろうとしているだろうか。日本人だけ、真っ黒で真っすぐな子だけ、決められた枠に入った子だけ、と画一的な価値観を持てと逆のメッセージを子どもに送っていないだろうか。

(秋吉晴子、しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄代表)