コラム「南風」 料理は科学


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 皆さんに身近な科学。その一つは、間違いなく「料理」だ。
 ご自身で意識しているかどうかにかかわらず、目の前の料理は誰かが作ったもので、それを味わっている。この毎日の「料理」こそ、いや、それを食べているあなたを含めた全体が「科学そのもの」と考えられるのだ。

 科学では、研究者が目的を設定し、目的を達成する手段を考え、実施し、評価・検証する。この一連の作業を何回も繰り返すことで、結果を向上させる。さらに、多くの場合、全体は「数値」でコントロールされる。
 料理では、作る方が、「おいしいと感じてほしい」「楽しんでほしい」、あるいは「痩せてほしい」、場合によってはご自身で「ごく簡単に済ませたい(それでもおいしく)」と考えて目的を設定する。そして、材料や環境から手段を考える。次に、実際に料理し、食事として提供する。これを「食べて」主に味で(まれに量で?)評価・検証する。一連の結果は次の工夫につながり、これが繰り返されることで確実に成果が向上する。さらに、調味料の量、調理温度、時間など「数値」で料理の成否が分かれる。まさにこれが重要な「さじ加減」である。
 そう、私たちは毎日「科学」に接していたのだ。しかも、食べることは誰もが大好きなので「毎日楽しく科学に接していた」ことになる。
 当方は、僭越(せんえつ)ながら沖縄県内の実力シェフが名を連ねる「友志会」の隅に加えていただいている。これも、料理人の方々が、料理と科学の「近さ」を感じていただいたからこそだと深く感謝している。実際、お堅い学術集会に参加するより、学ぶことがとても多い。
 さて、今日はいつも以上に「料理」を作った方々の想いを意識し、感謝して、ゆっくりおいしく味わおう。
(塚原正俊(つかはらまさとし)、バイオジェットCEO)