コラム「南風」 おいしいって?


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 毎日の食事。
 誰もが例外なく「おいしい」ことを望んでいるだろう。
 「この食べ物が好き」、あるいは、初めての物に「これ、おいしい!」という会話は日常的だ。しかし、「おいしさ」っていったい何だろう。実は、科学的にはかなりの難問だ。

 逆に「まずい」。こちらは、やや考えやすい。なぜ、まずいのか。そう、人が「食べてはいけない」ものは「まずい」と感じるのだ。
 有毒成分として自然界に多く存在するアルカロイド系物質は苦いらしい(当方はもちろん未確認)。このうち「安息香酸デナトニウム」は、あのギネスブックにさえ載っているという史上最強・世界一の苦み成分だ。水に1億分の1溶けているだけでその味が感知できる(こちらも「らしい」)。ギネスブックでは、たくさんの人が世界一を競っているが、このように「人以外」もいろいろ楽しませてくれている。
 さて、問題は「おいしい」だ。仮に「まずい」と同様の考えでいくと、「身体に必要な物はおいしい」となる。実は、この考え方はある状況では正しい。塩分、糖分などが極端に不足した「飢餓状態」では、「不足した成分を含んでいる味」はおいしいと感じ、自然に欲することが分かっている。
 では、逆はどうだろう。「おいしいものは身体に必要」なのか。いや、数々の現代病の例を挙げるまでもなく、明らかに身体に過多あるいは不要なものまで「おいしい」と感じている。
 なぜか。
 人は歴史的に「常に飢餓状態」にいた。しかし、急変した現代の飽食環境に身体がついていくことができていない、と言われている。
 それなら、知恵を使おう。
 「おいしい」ことはもちろん重要。これからはあえて「控える」ことも取り入れながら、自分に適した食べ物、食べ方を楽しみたい。
(塚原正俊(つかはらまさとし)、バイオジェットCEO)