コラム「南風」 出会いと別れ


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 3月は卒業シーズン、出会いと別れの季節だ。学生時代は、自分が何から卒業するのかが明確で、その時期も卒業式などを経験することで区切りをつけることができていた。しかし、社会人になり仕事や、結婚して主婦業をしていると、何かから卒業するという感覚を経験することが少なくなった気がする。そう感じ始めた数年前から、新しい年度を新たな気持ちで過ごすため、この時期に本年度を振り返り、次年度の目標を立てる日を作るようにしている。

 何てことないように感じるが、私にとってはとても効果があり、一度気持ちをリセットすることで、物事が整理でき、そして何より人との出会いを新鮮に感じることができるようになった。
 人との出会いで人生は大きく変わる。出会いは別れと一対になっていて、別れのない出会いはない。
 身近な話で、大学進学のために親元を離れる子どもを送り出す友人の話がある。親としては、子どもがこの先一人で生活することが心配で仕方ないが、子どもにとっては親元を離れる寂しさよりも、これからの新生活への期待がきっと大きいのだろう。涙の止まらない親とは裏腹に、あっさりしている子ども。そんな子どもへ「私はこんなに心配で寂しいのに、どうして寂しくないの?」と思うかもしれないが、きっと子どもにとってこの別れは、長い人生の中でのステップの一つなのだ。
 ただ、たとえ今は気持ちに温度差があり全てが伝わらないとしても、伝えるべき気持ちは言葉にすることが何よりも重要だと思う。この親と子の別れも、新たなる生活のスタートであり、気持ちに区切りをつけることで、その後の生活がより充実したものとなるだろう。別れの後には必ず新しい出会いが待っていると信じ、出会いをキャッチするアンテナを閉ざさずに、新しい出会いに向かって積極的に行動してみたい。
(山川杉乃、うみない美代表)