コラム「南風」 練習風景


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 「ダバドッビ、ドュダッダドッビドュバー、シュバババドゥビ、ディドュビデュバ」「フー!」。これはちょっとした準備運動。ピアノの白鍵と、黒鍵を自由にアドリブで駆け巡る。歌声と一緒に旋律を同化させる。頭の中はすっきりダイエット。練習の本題に取り組むまでの準備運動のようなものだ。無心な気分になれる。

 また、新鮮な気持ちで作業に向き合いたい時、時々開くノートがある。ライブ活動に欠かせない曲のメニューを書き綴(つづ)ったもので、現在6冊になる。それを眺めていると、いろいろな背景が蘇(よみがえ)ってきたり、苦戦した時の必死な練習風景が思い出される。昔々好きだった曲や、弾いたりしていた曲など、現在に至るまでの没頭し尽くした年月を顧みると、いつの間にか遠い思い出になっている。
 幼い時はお風呂場が私のステージとなっていて、今でも大ファンである松田聖子ちゃんの歌をテレビから聴いたり、カラオケで歌ったり。そんな日は何ともハッピーな気持ちで一日を過ごすことができた。物まねをしたりと時間も忘れ「早く出なさい!」とお叱りの記憶も。洗面器を顔に近づけ、ヘッドホン役としていた。声が近くよく聞こえることに感動し、歌うのが楽しいお風呂タイムだった。
 今はこうだ!
 レコーディングに向けて作業をする訓練の一環として、「耳の後ろに手を当てて声を出して歌う」。そうすると自分の声がよく聴こえる。レコーディングの時に使用するヘッドホンから聴こえてくる声は、息が細くなり、「ムニャムニャ」なども耳に近く聴こえるので、声を出すバランスが難しくなる。なので、練習の時は、そんな「耳当て」をしながら口ずさみ、声のバランスや、言葉の出し方などの訓練をしたりしている。
 明日は少し気分転換、早起きして好きな場所で本を読みたいな。散歩もいいな。
(安富祖貴子(あふそたかこ)、ジャズ歌手)