コラム「南風」 便利ですか?


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 ほんの十数年前まで「携帯」も「薄型テレビ」も「自動掃除機」も、全て未来の空想だった。それが、今や当たり前。ドラえもんの一部の道具が現実となり「夢の世界」に一歩近づいた。

 しかし、以前よりも今は「本当に便利になった」と言えるだろうか。
 まだ携帯が無い時代、「公衆電話」を頻繁に利用し、特に不便は感じなかった。出張の際は、「定時連絡」や「他の人が対応」で乗り越えた。電話番号は「暗記」し、後は「メモ」で十分だった。
 それが、今や小学生が携帯を持ち、連絡どころか居場所も把握できてしまう。
 変わった。
 これでは、当方が小学生のころに楽しんだ「秘密基地を作るワクワク感」も「時には門限を破ったドキドキ感」も味わえない。
 確かに、いろいろな道具で、便利になった部分はある。生活の質に、道具が影響することは間違いない。
 しかし、「常時監視され」「いつでも連絡が来る」状況こそが、輝かしい世界だ、という方はほとんどいないだろう。「便利さ」とは「モノ」自体が持つものではなく、使う「ヒト」を含めた総合評価なのだ。
 事実、あのドラえもんでさえ、2100種もの秘密道具から、たった3種を2話に1回という高頻度で繰り返し使っている。これらは彼にとって「とても便利」。逆に1100種は1度きり。多くがいまひとつだったということだ。
 中心は、使う「ヒト」。あなたが「携帯は楽しく自分にプラス」なら便利で良かった、ということだ。
 「モノ」に使われず、自らが効果的に「モノ」を使って便利さを満喫したい。
 研究開発では、数年前には想像もできなかった最新機器を駆使する。これらの「モノ」に振り回されずに「使いこなして」、最新の成果を人々の「便利さ」「豊かさ」につなげたい。
(塚原正俊、バイオジェットCEO)