コラム「南風」 切磋琢磨


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 ジャズのアルバム制作にあたって、毎回、さまざまな楽曲の提案が上がってくる。楽曲のアレンジも、プロデュースを担当される方々のアイデア次第で曲の色合いが決まる。提案された楽曲に早く馴(な)れるようにと、四六時中曲を流し、手順を組み立てていく。

 そろそろ楽曲とにらめっこ。白紙の紙に、横線をいくつも書き、その線を縦四つに区切って、お手製の譜面を作る。曲を何度もリピートしながらコードを採り、全体の流れを写譜していく。
 楽曲にも馴れた頃、シーケンサー付きのピアノで録音をして、色々なリズムパターンで練習用のカラオケを作る。歌詞とメロディーを幾度となく口ずさみながら、楽曲の流れに親しんでいく。全体を体の筋肉に覚えさせるために、歌に様々なニュアンスを加えて歌い込んでいく。表現や息づかい、グルーブ感、口の空け具合等と、細かく分けながらの作業が延々と続く。
 また、英語が中心となる歌詞の作業をするにあたっては、自分なりの英語の訳だけでは、解釈はどうにも味気なくなってしまう。よって、歌詞を吟味する作業の時は、私の尊敬する音楽仲間で、練習の時からステージまでサポートしてくださっているギターの知念嘉也さんにいろいろと教わっている。彼が12年間アメリカに住んでいた経験を生かして、発音、訳詞、意味合いの解釈等に尽力してくださるのは、とても有り難い。
 また、知念さんは、私のデビューアルバム「魂」のプロデュースを手掛けてくださったベーシスト井上陽介さんともご縁があり、ギタリストとしてアルバムにも参加していただいている。
 楽曲に取り組む作業に大奮闘する中、身近なサポートがあったおかげで、心強く、ジャズに寄り添って励んでこられた。今までのご縁での出会いが、ジャズに出会えて良かった、と感謝の気持ちにさせてくれる。
(安富祖貴子、ジャズ歌手)