コラム「南風」 運動しても痩せません


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 2000年、沖縄男性の都道府県別平均寿命が26位に下がりました。当時の私は、伊良部島の診療所で不眠不休の勤務。離島医療では高度医療施設への搬送はヘリコプター頼りですが、荒天時には飛べません。医療の限界を感じ、私自身も疲労困憊(こんぱい)していた矢先に「沖縄クライシス(危機)」を知らされ、大好きな沖縄が日本一の肥満県になったことに衝撃を受けました。

 そのとき私が痛感したのは、予防医療の重要性です。病気になってからでは遅いし、治療費もかかる。だったら、沖縄から肥満(メタボ)をなくせばいいじゃないか―。そう思った瞬間、私はダイエット外来をやると決心していました。
 当初は、カロリー制限と運動療法で指導しました。ところが期待したほどの効果はなく、患者さんもストレスで大変。正しいと思っていた従来の指導法が間違っていて、運動では痩せないのだと後になって思い知ることになりました。
 体重を1キログラム減らすには170キロメートルも歩く必要があります。毎日5キロ以上歩いて30日です。1日休めば、翌日は倍の10キロにしなければなりません。膝や腰が痛い高齢者には難行ですし、沖縄の夏の暑さでのウオーキングはとても危険です。
 運よく痩せても、やめれば元に戻るだけ。運動すると余計に空腹になるのも問題です。特に、女性は出産や授乳に耐えるエネルギーが必要ですから、運動で減らした体脂肪を取り戻そうと、たくさん食べてしまいます。トレーニングジムの帰りに軽食を食べる人が多いのはこのためです。
 最初に肉・卵・チーズを30回噛(か)んでたっぷり食べ、主食や野菜を後回しにする糖質オフの食事法が「噛むだけダイエット」です。運動は不要ですし、膝が痛い人も4キログラム程度の減量で歩けるようになることが、経験上わかっています。
(渡辺信幸、こくらクリニック院長)