コラム「南風」 TTP


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 当方の趣味の一つは「水泳」だ。
 スポーツや趣味、仕事を「新しく」始める時、新鮮でとてもドキドキする。そんな右も左もわからない状況でも、教えられたことは割と素直に聞けるものだ。
 水泳を始めた時もそんな状況だった。水を飲んでも、上手(うま)く泳げなくても、言われたことを必死でやった。

 それからしばらくたった頃、確かに少しは上手くなった。しかし、何か違う。もっと上達したくていろいろ教えてもらったが、自分の考えと違ったり、違和感があったりと素直には聞けなかった。「自分のやり方を見つけなきゃ」。そう思ったとたん、「上達が止まった」。全く進歩がなくなった。
 今なら、迷わずその時の自分に伝えたい。
 「TTPだ!」と。
 この言葉、もとはイオンが社内で使っていたらしい。下着メーカーのトリンプは、この号令で業界2位に業績を伸ばしたと言われる。
 「徹底的にパクれ!」
 このローマ字を略して「TTP」。要は真似(まね)して伸びろということだ。それも、とにかく「徹底的に」。
 何かに取り組んでいるとき、特に「そこそこ上達した」頃、人の助言ややり方を素直に受け入れられない自分がいる。いわゆるプライドが出てきたのだ。
 しかし、早く実力をつけたいなら、そんなプライドはいらない。デキる人(あるいは書物)を見つけて、徹底的に真似しよう。その人の完全なるコピーで構わない。
 こう言われると「個性」が心配になるかもしれない。ご安心を。スペシャリストの完全なるコピーが進めば、間違いなくあなたの個性が自然と溢(あふ)れ出してくる。
 あなたの個性は、真似る(学ぶ)ことくらいで消えたりしないのだ。
 何か上達したいなら、
 「TTP!」
(塚原正俊(つかはらまさとし)、バイオジェットCEO)