コラム「南風」 気をつけて!


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 つい先日、実験中に誤って「ビーカー」を床に落とし、割ってしまった。
 完全な「ミス」だ。

 幸いけがもなく、ミスで落とした中身は「ミズ」だったので、被害はビーカーと掃除だけで済んだ。
 人間の行動では「ミス」をゼロにすることはできない。ある頻度で必ず起こる。だからと言って開き直っては全く改善しない。「頻度を下げる対応」が必要だ。
 ビーカーを割った時、少しショックを受けてから、「気をつけよう」と思った。他の人からも「気をつけてくださいね」と言われた。さて、これで十分だろうか。
 目標は「ミスの頻度を下げる対応」だ。「気をつける!」と自分で思ったり言われたりすることで、ミスは減るだろうか。
 おそらく「気をつけよう」と思うことで、数日間、同じミスは減るだろう。さすがに、ビーカーを持ったら思い出し「気をつける」。
 しかし、これだけでは、その後、元に戻ってしまう。なぜなら「気をつける」対象は生活の中で無数にあり、次々と新しいことがやってくるため、古いことは薄れてしまう。「ミスが減った状態」を持続するためには「気をつける」と意識するだけでは不十分だ。
 ではどうすればよいか。「具体的行動」に言い換え「実行する」ことが必要だ。
 ビーカー対策としては、「濡れた手で持たない」「プラスチック製に変える」など、状況に合った単純かつ効果的な対応がふさわしい。実行すれば習慣となる。習慣ならミスが減った状態を身体が覚え、維持できる。
 当方の知る限り「ミス」対応の最高峰、プロ集団の一つは間違いなく「航空業界」だ。一般の方の想像をはるかに超えたシステムを構築し更新し続けることで、高い安全性を確保している。
 「気をつけて」という言葉は温かくて好きだ。この想(おも)いを大切にするためにも、具体的行動を意識したい。
(塚原正俊、バイオジェットCEO)