コラム「南風」 風の記憶


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 新年あけましておめでとうございます! しおりです。これまでさまざまな職業の方の言葉に感化されてきた「南風」のコーナーを、なんと私も担当させていただくことになりました。拙い文章ですがどうぞよろしくお願いします。

 大好きな沖縄を離れ、さらなる高みを目指すために上京してはや3年。南の風を探しながらもすっかり東京生活に慣れ、今では自分の事をシティーガールと呼んでいます(「シティーガールのイントネーションが訛(なま)っている」と突っ込まれることもありますが)。
 高いビルの間を足早に過ぎていく人々、時間ピッタリに到着する電車、輝く星のかわりに鮮やかなネオンが街を照らす…景色も時間の流れも何もかもが沖縄と違って見える都会の街で、ふと故郷を思い出すことがあります。それは「風」です。秋にさしかかるころ、銀座の街をボーっと歩いていたら「あの時と同じ風だ!」と感じ、それと同時に突然記憶がフラッシュバック! 中学3年生の放課後、高台に立つ校舎のベランダで、できたばかりのゆいレールを眺めながら友達と夢を語り合ったあの日…。
 「将来歌手になって東京に行きたい!」「じゃあ○○(当時流行(はや)っていた歌手)と共演したらサインもらってきてね」と、指切りを交わした思い出。気温、風のスピード、全てが記憶の中にある風と絶妙に重なった時、まるでその場にいるかのように、その時の光景が頭の中に広がっていったのです。あれから11年。当時思い描いていた理想の自分にはまだなれていないけど、風によって初心に帰ることのできた訛り気味のシティーガールは、ここからまた頑張れそうです。私の青春を彩った沖縄の風。このコラムを書いている今日、東京の気温は9度、沖縄は22度。懐かしい風の記憶を感じるのはしばらく先になりそうです。
(しおり、シンガー・ソングライター)