中部病院、脳死男性の臓器摘出 心臓など県外搬送


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 臓器移植法に基づき県内医療機関で初めて脳死と判定され臓器提供をする30代男性からの臓器摘出手術が8日早朝から、県立中部病院で行われた。摘出された臓器は移植を実施する県外病院に運ぶため、ヘリやタクシーで那覇空港まで搬送された。男性から移植される臓器は心臓、肺、肝臓、膵臓(すいぞう)、腎臓で、移植される患者は優先度などで決定された。

日本臓器移植ネットワークと中部病院によると、手術は8日午前5時56分に開始され、同9時25分に終了した。
 7日午後10時以降、臓器を摘出するため、東京大学医学部付属病院など移植を実施する病院から医療チームが中部病院に駆け付けた。8日午前7時50分ごろに摘出手術を終えた東大病院のチームがクーラーボックスに心臓を入れて、中部病院を病院車両で出発。うるま市州崎のヘリポートから県ドクターヘリで那覇空港まで運び、チャーター機で飛び立った。その他の臓器は順次、タクシーで那覇空港まで運ばれた。その後、各病院で移植手術が実施された。
 中部病院は「脳死下の臓器提供にも対応できる体制を進めてきた。今回、無事臓器提供が実施された。提供された全ての臓器の移植が成功することを願っている。今回の提供を機に県民の理解が深まり、臓器提供・移植がさらに普及することを期待している」とコメントした。
 男性は書面で臓器提供の意思を示していなかったが、家族が承諾した。臓器移植法施行後、脳死判定は317例目で、本人の意思不明は172例目。
 日本臓器移植ネットワークによると、臓器移植希望者のほとんどを占める腎臓移植希望者の県内登録者数(2014年末)は251人。県内の透析患者数は約4200人で、人口比では全国でも高い水準にある。

摘出した臓器を収めたクーラーボックスを持って出発する医療スタッフら=8日午前8時59分、うるま市の県立中部病院