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『はじまりへの旅』 親子とは? その関係性について考えさせる映画

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 既成概念を覆す、あるいは一石を投じるタイプの映画は珍しくない。特に1960~70年代のカウンターカルチャーの時代には、こぞって作られた。フランスのヌーベルバーグやアメリカン・ニューシネマが、その代表例だろう。日本なら寺山修司の映画などが思い出される。それでも21世紀の今、こういう映画を見せられると、やはり新鮮。そう、我々はあまりにも常識に縛られて生きているから。年をとるとなおさらである。

 クリスマス(キリストの降誕祭)よりも哲学者ノーム・チョムスキーの誕生日を祝う奇妙な一家の話だ。父親による独特の教育方針の下、現代社会から隔てられて育った6人の子供たちは、アスリート並みの体力を持ち、学識も豊富。ある日、入院していた母親が亡くなり、葬儀のため一家は旅に出る。そして、世間とのギャップが我々観客に大きな波紋を投げかけるのだ。

 とはいえ、偏った主義主張を押し付ける映画ではない。本で得た知識は女の子を口説く際には役立たないし、娘が大ケガを負うことで、彼らの生き方が薄氷の上に成り立っていることも隠さない。また、本作は子供たちの通過儀礼の物語としても十分に面白いのだが、主人公はあくまでも父親。親だって迷い、失敗する。子供は親を選べないけれど、でも愛情さえあれば子供はちゃんと育つ。親子とは? その関係性について考えさせる点でも秀逸な映画である。★★★★☆(外山真也)

監督・脚本:マット・ロス

出演:ヴィゴ・モーテンセン、ジョージ・マッケイ

4月1日(土)から全国公開


(共同通信)