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『成功者K』羽田圭介著 芥川賞作家はなにに成功したのか?

 

 一昨年に芥川賞を受賞して以来、数多くのテレビ番組に出演してきた著者。小説家がテレビに出るのは珍しくもなんともないとしても、その数の多さは異様だったし、番組のみならず、役割や発言をも選ばないという姿勢に驚いた人は少なくないだろう。明らかに著者は従来の一般的な小説家像から大きく逸脱する存在となった。

 そして本書はほとんど著者と同一人物かという小説家の主人公が、芥川賞受賞を契機に「成功者K」を自称し、請われるままテレビに出て、出演料を荒稼ぎし、美しい女性たちと性交しまくる日々をドキュメント調に描いた小説である。

 これが著者のリアルライフなのかどうかはもちろん分からない。そのように思われても構わないというか、積極的にそう思わせようと確信犯的に書かれていることは事実だ。多くの読者はそのまま信じたりしないだろうし、仮に信じられたとしても構わないという態度が透けて見えるところが、あざとい、と言ってしまえばそうなのだが、そのあざとさももちろん計算のうち。著者がそもそもテレビに出まくった理由は、需要があるうちにやれることはやっておこうということなわけで、同じようにネタにできるうちに書いておこうという意図だと考えられる。合理的だし、誰かに非難されるような行為でもない。

 興味深かったのは、作中の「成功者K」なる者が本当に「成功者」なのかどうかという問題があえて避けられるようにして話が進んでいくことだ。有名でお金があって女性にモテる男が成功者なのだと著者が本気で考えているはずがない。かといって文学者を気取ってみたところで、売れない小説家の生活は成功という言葉の輝かしさとは縁遠い、地味でつつましいものだ。

 すべての成功は幻でしかないというところに、この小説を小説たらしめている核のようなものがあるのだと思うが、それを書くために自らをとことんネタにするという手段の選ばなさにはやっぱり脱帽する。

(河出書房新社 1400円+税)=日野淳

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(共同通信)