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「DVD=2」 椎名林檎『椎名林檎と彼奴等がゆく 百鬼夜行2015』 圧巻の精度で「今」を夜行する女神

 椎名林檎『椎名林檎と彼奴等がゆく 百鬼夜行2015』

 沁みてくる。見るほどにその作品世界が身に沁みて侵食されていく。ああやっぱりすごい人だ。見る前と後で、目に映るこの世の色を確実に変えてしまう人。椎名林檎、ここにあり。ソロ名義ではじつに12年ぶりとなる全国ツアーのなかから、2015年12月に行われた神奈川県民ホールでの公演を、本作用に選曲・編集したDISC1。そしてDISC2では、このツアー終了の翌年に同じ神奈川県民ホールで同メンバーが集い、収録した10曲のライブセッションが堪能できる。

 神奈川県民ホールでの実演(ライブ)は、椎名ナンバーのみならず東京事変での作品、他のアーティストへの提供曲などが縦横無尽に披露され、コアなファンからも「神セトリ」の呼び声が高かったそうだが、選曲もたしかに素晴らしいし歌声も、サウンドも(彼奴等のすごみ)、衣装を変えるタイミングと回数ですら、圧巻の精度ではないか。聞けば来年、2018年にはデビュー20周年だそうだが、過去から現在、そしてこの先をも想起させるパフォーマンスは、なじみの曲すら懐かしいなんて言っている暇もなくすべてが今、最前線を進んでいる。セルフパロディ的なナース姿での『熱愛発覚中』はやっぱりものすごい破壊力だったけれど、個人的には『きらきら武士』が秀逸だった……。あんなに妖艶に、武士、武士って歌えるなんて、もう本当に素敵です。

 と、ついでにもう一つ個人的な話をさせていただこう。椎名林檎といえば、相変わらず深夜のカラオケボックスで思いつめたように『罪と罰』あたりを叫び出す女友達がいて、その心持ちがわかりすぎてつらくて、しばらくちょっとご本人のパフォーマンスすら苦手になっていた。でも、今こうして改めて対峙すると、私だってすっかりもう、その歌に音に胸の奥底をかきまわされている。そうか、歌というものは数分間の短い祭り。たまにはひとつ、てらわずに叫ぼうじゃないか。

(ユニバーサルミュージック・5500円+税)=玉木美企子

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(共同通信)