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ダンスや本音が作る流行歌 上半期のヒット曲

 ウチナーグチで「さとうきび畑」などを歌う上間綾乃

 このところ誰もが知るような国民的ヒット曲もないし、歌が必要とされなくなっているのでは―。5月から音楽を担当するようになる前にうっすらと抱いていた不安は、あちこち取材するうちにだいぶ払拭されてきた。スマートフォンで孤独に音楽が聴かれ、有線放送などみんなが同じ歌を耳にするような機会は減っても、多くの人の心に深く届いている歌はたしかにあるようだ。どんな歌がはやるのか。音楽担当になったばかりながら“ダンス”や“本音”といったキーワードが見えてきた。

 「ヒット曲がないよねえ」との嘆きは近年、音楽業界でも当たり前のように繰り返されていたそうだが、音楽市場アナリストの臼井孝さんによると「この1年でだいぶ言われなくなってきました」と意外なお話。ビルボードの今年上半期のヒットチャートを見ると、星野源の「恋」やピコ太郎の「PPAP」、欅坂46の「二人セゾン」「不協和音」「サイレントマジョリティー」などが並んでいる。以前に比べると、知っている曲がいくつかあるぞという方もいるのでは…。

 先に挙げた曲は、いずれもユニークなダンスが大きな話題になった。テレビやインターネットの配信映像を見て、友達や家族とまねするなどして、社会現象のような人気に広がった。ダンスを中心としたインパクトのある動画は、ヒットを生む強力な要素としてすっかり定着したようだ。

 さらに臼井さんがこのところ注目しているのは、「よー、そこの若いの」と汗やつばを飛ばしてシャウトする竹原ピストルや、パン屋に住み込みで働きながら曲を書き続け“ショッピングモールの歌姫”と呼ばれるようになった半崎美子ら。「歌がうまいだけではダメです。会員制交流サイト(SNS)で嘘がすぐばれる時代だから本音がなければ。実生活の苦労話やはっきりしたキャラクターもウケている」と臼井さん。

 ヒット曲「不協和音」で、同調圧力が強まる社会に「僕は嫌だ」と叫ぶ欅坂46は、人間の本音や社会の現実を歌で暴き、力強いダンスで表現しているから人気なのだろうと思う。

 本音の歌と言えばこのところ、飾らない方言を個性や魅力としている歌手も目につく。ブレーク中の3人組みロックバンド「WANIMA」はライブで、熊本弁でしゃべり倒し、人気歌手のAIはインタビュー取材にぬくもりのある鹿児島弁で情熱的に語った。幼少期から話してきた言葉のイントネーションを隠さない率直な語り口は、魂のこもった歌にも反映されるのだろう。沖縄出身の歌手、上間綾乃は6月に出した新譜「タミノウタ」で、沖縄の言葉(ウチナーグチ)に歌詞を変えた「さとうきび畑」や「島唄」などで自らのルーツを見つめている。沖縄の歴史を歌うには、地元の言葉が最もふさわしいと思わせる。

 情報があふれ、インターネットで音楽聴き放題の時代だからこそ、激しい競争を勝ち抜くために「本物の歌」が生き残る。ことしの後半はどんな歌が私たちの心に響くだろうか。(佐竹慎一・共同通信文化部記者)


(共同通信)