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『獣道』 絶対に埋もれさせたくない、青春映画の傑作

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 地方社会に生きるティーンエイジャーたちの青春を、笑いあり、切なさありで描いたブラックコメディ。監督は、前回の「花まる」でも紹介させいていただいた『身体を売ったらサヨウナラ』の内田英治監督です。

 代表作『グレイトフルデッド』では孤独死寸前の老人を愛する孤独な少女の姿を描いた内田監督ですが、本作でも愛を求めながらも孤高に生きる少女・愛衣がヒロインとして登場します。愛衣を演じるのは、元子役の伊藤沙莉という女優さんなのですが、彼女がもうこの上なく良い! ここ最近見てきた女優さんの中でもズバ抜けて上手くて、小柄ながらもちょっと低めでハスキーな声もすごい色気があって、とてつもない存在感を放っています。

 映画の冒頭で「実話に基づく」と書いてあるのですが、ネグレクトに風俗、ヤクザや暴力など作品に登場するエピソードはとにかく激烈。「こんなこと本当にあるのかな!?」と思いながらも観ていくうちに納得しました。愛情を求めるが故に、キャバクラから風俗へと身を落としていく愛衣の姿は、先日観たアメリカのポルノ産業を描いたドキュメンタリー『ホットガールズ・ウォンテッド』で描かれる、田舎からポルノ女優を目指してロスに出てくる少女たちに重なりました。この作品で描かれている問題というのは、日本に限らず繁栄している都市ではない場所に生まれた若者たちが送る人生を思い起こさせます。

 出演陣は子役から見事に大人の俳優へと脱皮した須賀健太、お笑い芸人のアントニー、最近メキメキと実力をつけている吉村界人、こちらも名子役だった韓英恵、映画『ケンとカズ』の毎熊克哉など、今後日本映画界を揺るがしていくであろう原石ばかり。大笑いして、泣けて、心も痛くなる、素晴らしい作品なのに公開規模は小さいから本当に悔しい! 簡単には埋もれさせたくない、素敵な作品です。★★★★★(森田真帆)

監督・脚本:内田英治

出演:伊藤沙莉、須賀健太、アントニー、吉村界人

7月15日から全国順次公開


(共同通信)