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変わる映画館 日本初、遊具併設や3面映写

 スクリーン前の遊具で飛び跳ねる保育園児たち。奥に見えるのが滑り台=イオンシネマ常滑

▼日本初、映画館の客席の横に子ども向け遊具を設けたシアターを持つシネマコンプレックス(複合型映画館)、イオンシネマ常滑(愛知県常滑市)が7月12日、オープンした。「げんきッズシアター」と名付けられたその劇場に入ってみた。大きな滑り台が側面にあり、スクリーンのすぐ前には、子どもたちが跳びはねられる遊具もある。客席の高さは低く、背もたれは大きくてカラフルなクッションになっている。親御さんたちからは「地元に映画館ができた」というワクワクした気持ちが伝わってきた。

▼遊具で遊べるのは上映の前後各15分間で、3歳~小学6年生まで。初めて映画館に来た子どもでも怖がらずに済むよう、照明は上映時も隣に座る親の顔が分かる程度までしか落とさず、音量も少し抑えめだ。内覧会に招待された近隣の保育園児たちは、大喜びで遊具で遊んだ。子どもたちが映画館体験を「楽しい」と記憶して、成長してからも映画館に足を運んでくれたらと願う。遊具を併設した映画館は、米国やメキシコ、マレーシアなどに既に存在するという。

▼一方、ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場(東京)は今月、日本初、両サイドの壁面にも映像を映写できるシアター「Screen X」をオープンさせた。この上映システム向けに撮影した韓国映画「新感染」(日本公開は9月1日)などが存在するが、そうでない作品は、撮影したが本編に採用しなかった素材や、CGで制作した映像を側面に映写する。

▼売りは、周囲270度が映像に包まれる「没入感」。筆者は、両サイドからチカチカ感を受けるため、時間がたつにつれて疲れを感じたが、サイドにも映像を映すのは全編ではなく、合計30分程度という。この3面映写型シアターを開発したのは、4DXを開発したのと同じ韓国企業。4DXとは、上映作品の内容に合わせて客席が動いたり、水や霧が噴き出したりする体感型上映システムのことで、日本では特に2015年から導入館が急増した。

▼ネットでの動画配信や大画面テレビの普及で、映画の観賞形態は多様化している。映画誕生から122年でも、最大級の変化だろう。多様化は見る側の利便性に資するため、悪いことではない。ただ、世界最高峰のカンヌ国際映画祭(5月)では今年、あるネット配信企業が、非常に多くの作品の世界配給権を買い付けたと耳にした。その作品たちは基本的に映画館で上映されることはないだろう。見知らぬ他人の反応も感じながら見ることの良さを、今後も多くの人に味わってほしい筆者としては、複雑な思いだ。

▼一方で、京都の町や歴史の専門家が話してくれた。「今、京都の新京極にあるシネコンは、元々は芝居小屋でした。それが、映画が隆盛して映画館になった。都市の、人々を楽しませるための機能はそのままに、中身が芝居から映画に変わったというわけです。最近は映画の中身が変わって、少なくとも日本では、実写よりもアニメがたくさんの人を集める。だから、今後はアニメがどうなっていくのかということでしょうね。映画の歴史は大して長くない。そりゃあいろんな変化はありますよ。他人同士が隣り合って見るという映画館の特性を、どう生かしていけるのか、そこに尽きるんじゃないでしょうか」

▼皮肉なことに、と言うべきか、演劇は現在、少なくとも東京では劇場の大小を問わず、お客さんがよく入っている。現場でしか味わえないライブに人が集まるという傾向を、如実に感じる。録画した映像を繰り返し再生する映画や映画館はどうなっていくのか。筆者は、国内外の映画監督や俳優、大小の映画館経営者、自主上映団体など、さまざまな人々に、観賞形態をめぐる潮目の変化をどう受け止め、知恵を絞っているのか取材を続けているので、当欄でもまた、機会をみて紹介したい。

(宮崎晃の『瀕死に効くエンタメ』第100回=共同通信記者)


(共同通信)