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『あぁ、だから一人はいやなんだ。』いとうあさこ著 自分を上機嫌にする方法

 

 最近のバラエティ番組界隈には「女芸人」というカテゴリーがある。いや昔からずっとあったのだけれど、近ごろもてはやされる「女芸人」の皆さんのあり方は、だいたいこんなふうである。ケッコンをしていない。オトコもいない。すごく高いところから飛び降りたり、身体中泥まみれになったりしながら、時には自分の決してよろしくない体型すらも晒して、全力で笑いを獲りに行く。そして最近の「女芸人」の皆さんに見受けられる、特筆すべきポイントがある。

 連帯、である。

 彼女たちは強い友情で結ばれている。森三中・大島が赤子を産めば、陣痛真っ最中の病室にみんなで押しかけて背中をさする。椿鬼奴の結婚話に、最後まで釈然としない顔だったのは森三中・黒沢だったか。オトコのいないアラフォー女芸人が、連れ立って飲みに行って一緒に泣いちゃったとか、互いの実家で正月を過ごしたら親御さんがこんなふうだったとか、そんなエピソードが簡単に耳に入ってくる。

 そういったエピソードの立役者の一人が、「いとうあさこ」なのだろう。30歳を大幅に過ぎてから芸人として花開き、社交ダンスにバンジージャンプに大わらわだ。でも、そこに悲壮感はない。ただただまっすぐ一生懸命だから、みんないとうあさこを愛してしまう。だって、何しろこの人は、

 友だちのために泣ける女芸人である。

 本書には、40代半ばを迎えてもおひとり様生活を送る彼女の、きわめて素に近い日常がつづられている。タイトルに反して、ここに書かれている「いとうあさこ」は、まぎれもなく楽しげである。海外で四苦八苦したエピソード。少女時代に大好きだったミュージシャンのライブ。ふと「女子力」に思いを馳せる夜。そのいちいちから「いとうあさこ」の人柄が匂い立つ。喜怒哀楽を隠さずに、大切な仲間と心を重ねて、しんどくても笑えるポイントを、自力で探しながら全力で生きる。そこで起きたよしなしごとを、言葉をたっぷり使って読者に語りかける。この本は、「いとうあさこ」の洪水である。

 それぞれのエッセイの最後には「今日の乾杯」として、その日の酒とつまみが紹介されている。飾らない一皿と「日本酒ロック」。自分を上機嫌にさせるすべを知っている女は強い。ケッコンとかヨメイリとかいう次元ではなく、いとうさんがいとうさんにぴったりの幸せを生きられたら、この世の中、悪くないなと思うのである。

(幻冬舎 1400円+税)=小川志津子

あぁ、だから一人はいやなんだ。
いとう あさこ
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(共同通信)