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『去年の冬、きみと別れ』 衝撃の展開、そして切ないラストへ

(C)2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会

 「教団X」で知られる芥川賞作家・中村文則原作のサスペンス映画が公開されるのは、今年に入ってこれが2本目。1本目は、玉木宏主演の『悪と仮面のルール』で、どちらにも、ある理由で“悪に堕ちる男”が登場する。言い換えれば、本質的には悪人ではないということだし、犯罪を通じて人間の狂気のようなものがあぶり出される点でも相通じる。そんな中村文学の特徴が映像化によって顕著になる中、作品の出来栄えに雲泥の差があるのは、監督の力量が問われる題材だからだろう。

 本作の主人公は、野心家のフリーライター。危険な噂の絶えない天才カメラマンが、モデルの女性を焼死させた事件を記事にしようと真相を追うのだが…。主人公である記者の視点に同化して見るタイプの王道のサスペンス映画だと思っていると、途中から衝撃の展開をみせ、やがて切なくも“美しい”ラストへと至る。

 監督は『グラスホッパー』『脳男』の瀧本智行。もともとトリッキーなサスペンスには定評があったが、今回は照明も担う撮影監督・河津太郎とのタッグにより、世界観の構築ぶりはかつてない域にまで達している。とりわけ、燃え盛る炎vs激しい雨、ハードボイルドな前半vs幸福感に満ちた後半…強烈なコントラストを用いた語り口が見事。口紅の赤を赤い光で隠すといった細部の演出ぶりも際立つ。必見のサスペンス映画だ。★★★★★(外山真也)

監督:瀧本智行

原作:中村文則

出演:岩田剛典、山本美月、斎藤工、北村一輝

3月10日(土)から全国公開


(共同通信)